■ オーナーシェフとは同じ店で修行した仲
オーナーの蔭山シェフとは、同門といいますか、同じ店で修行した仲なんです。その後、私も蔭山シェフも別々の道を歩みましたが、同じ店で違う時期に働いていたこともあるなど、経歴が蔭山シェフと私は似ています。
蔭山楼の新店をオープンするころ、そんな蔭山シェフから「店を任せられる人を知らないか?」と連絡が来たんです。そこで「いますよ、私が」と答え、新店の立ち上げに加わりました。新店が落ちついたタイミングで蔭山シェフが恵比寿店に移動し、私が本店の自由が丘店を任せられるようになりました。
実家が食堂で、十代のころから店の手伝いや自分の昼ごはんを作っていました。高校を卒業し、柏の有名な高級中華料理店で7年間修業。蔭山シェフと出会ったお店です。その後、一度実家に戻って兄と一緒に13年間食堂を運営し、師匠の店で働いていたときの先輩シェフに声をかけていたいだき、中華総菜専門店で2年間働きました。さらに、師匠の親戚が経営する中華料理店で7年間シェフを務め、師匠の店で料理長を務めていたところ、蔭山シェフから声がかかりました。
■ 3つのソースのハーモニーが味わる「フカヒレの刺身」
フカヒレ専門店を謳う当店の人気メニューの一つが「フカヒレの刺身」。フカヒレをスープにくぐらせてから蒸し、それを冷やすと煮凝りのような状態になります。最適な厚さに切り分けて盛り、皿のふちに「バジルソース」「カルパッチョソース」「ネギとしょうゆと山椒のソース」を回しかけて提供します。
ソースをつけて食べてもらえれば、冷たくプルプルしたフカヒレの食感と3つのソースのハーモニーが味わえます。美味しく食べるコツは、3種のソースを先に混ぜてしまわないことです。ソースを混ぜてしまうと、別のソースが出来上がるだけで、3つの味が絡まりあい口の中で織りなす味のハーモニーが楽しめません。3つのソースを重ねることで、その比重の違いが一口ごとに風味が異なるいろんなバリエーションの味を楽しませてくれます。
中華料理は8割が下ごしらえ。フカヒレの刺身もしっかりと下ごしらえをしてあるので、あとはきれいに盛り付けるだけです。中華料理店の味は下ごしらえにどれだけ手間ひまをかけるかで決まります。だから下ごしらえは絶対に手を抜けません。
■ インターネットを使ったシステムに「スゴイな!」と感心しました
八面六臂を導入したのは蔭山シェフ。だから、私は蔭山楼で働くようになって、八面六臂を知りました。今まで働いていた店では、魚の業者でも「冷凍えび専門」「鮮魚専門」といった具合に、さらに細かく分かれているところを使っていたので、一つの業者でいろんな食材を届けてくれるのは便利だと思いましたね。そもそも、魚は市場へ仕入れに行くもの、という感覚の方が強く、届けてくれるだけでけっこう驚きでした。私はアナログな人間なので、八面六臂のインターネットを使ったシステムには「スゴイな!」と感心しました。
注文時点で魚の大きさがわかるのがいいですね。中華料理で使うには小さくても大きすぎてもダメ。日本料理のように切り身にして使うことが少なく、姿蒸しが多いですからね。魚の種類も豊富だから、時期や値段によって魚の種類を変えてみます。以前、生ホッケがあったので、仕入れて姿蒸しにして出したこともあります。美味しかったのですが、淡泊すぎて「焼の方が合う」と感じましたね(笑)