■ 独学でやってきたからこそ、できること
飲食業界に腰を据えたきっかけといえば、骨折でしょうか。25歳の冬、長野でスノーボード中に、腕を折ってしまったんです。さまざまな職を経験しながらも「そろそろ定職に」と考えていたタイミングだったので、将来についてじっくり考える時間になりました。あれこれと考えた挙句、行きついたのが、10代のころにアルバイトをした、飲食業界。そこで、骨折が治った後、市ヶ谷の小料理屋に就職しました。接客をするはずが、店主が料理未経験だったため、少しですが調理の心得のあった私が3日目から厨房に入ることに。気付けばそのまま10年、料理を続けてきました。
たまに本を参考にする程度で、基本的に料理は独学で覚えました。あまり料理人らしくないですよね。でも、他を知らないからこそ、オリジナルのやり方をできるメリットもあるんじゃないか、と思っています。
日本酒専門店を謳っていますが、メニューを考えるとき、特にお酒と料理の組み合わせは気にしません(笑)。「お酒と料理は、それぞれ単体でおいしいのが本当だ」という持論を持っています。お酒と料理の相性は、最終的にはお客様の感性が決めることですからね。
■ お客さんとお店が、ともに気楽でおいしいやり方を
「萬亮」は、前職で同じ会社で働いていた今のオーナーと一緒に立ち上げました。利き酒師の資格を持つオーナーが、全国からいい日本酒を仕入れおり、「専門店」の名のとおり、47都道府県の日本酒を常時200種類以上用意できるようにしています。品揃えは酒屋さんも驚くほどですよ。料理は和食に限定せず、おいしいと思ったものなら何でも提供します。オーナーの意向で生牡蠣だけは、通年メニューとして必ず用意しています。
日本酒の注文に関しては、通常のオーダーのほかに、時間制の「飲み放題」もやっています。飲みたいお酒を注文していただいてもOKですが、オススメは「おまかせ」。利き酒師の資格を持つオーナーが、お客さんの好みや予算を見極め、オーダーいただいた料理に合う日本酒をチョイスします。このやり方だとお客さんがまだ飲んだことがないけど美味しい日本酒を楽しんでいただけますし、日本酒の管理がしやすいというメリットもあるんですよね。お客様からも「自分で注文を考えなくていいから楽だ」と、好評をいただいています。
■ 「萬亮」のように、オススメをオススメしてほしい
八面六臂は知りあいのお店に紹介してもらいました。「萬亮」を開店するにあたり、生牡蠣を通年、仕入れられるところを探していたんです。八面六臂ならいろんな産地の生牡蠣が仕入れられるため、生牡蠣を切らさずに済みます。
夜中に発注をしても、次の日の昼には商品が届くので、助かっています。店の営業が終わったあとに発注できると、予測ではなく、実際に売れた分を見てから確実な量を仕入れられるのでいいですね。
以前、野菜の仕入れを減らしたところ、八面六臂から「どうかしましたか?」と電話をもらいました。単に値段が高かっただけだったので、正直に返答をしましたが、ちゃんとそれぞれのお店のことをチェックしているんだなと感心しました。
発注をかけるときは、サイトの中でも、ほぼ決まった商品しか見ないので、他の食材を知る機会が意外とないんですよね。だから「こんな食材もありますよ」という連絡を、定期的に八面六臂から欲しいくらいです。おすすめされたら、基本的には断らないと思います。「萬亮」も、お客さんにおすすめしていくやり方ですから、勧める側の気持ちがわかるんですよね。