イネ科トウモロコシ属
玉蜀黍、Sweetcorn
主産地:北海道、千葉、茨城、長野、群馬、山梨
旬時期:6月~9月

トウモロコシ

基本情報

米、麦と並ぶ世界三大穀物のひとつ。原産は熱帯アメリカとされる。栽培の歴史は古く、紀元前2000年より以前に栽培され、マヤ、アステカの古代文明はトウモロコシを主食として発達したといわれる。コロンブスがスピインに持ち帰ったことによってヨーロッパに伝播し、以降は世界各地で栽培されるようになった。日本には1579年、ポルトガル人によって長崎に伝えられたとされる。明治時代の北海道開拓を機に本格的に栽培されるようになった。

名称の由来

唐(中国)から伝来したモロコシ(キビ)の意に由来する。トウキビ、ナンバン(南蛮)キビとも呼ばれるが、これらはいずれも舶来のキビを意味する。日本各地で様々な呼び方が存在する。

キビ(北海道札幌市、長野県南部、鳥取県、高知県)
キミ(北海道南部、青森県、秋田県、岩手県)
トウキビ(北海道、東北、石川県、福井県、香川県、愛媛県、山口県西部、九州)
トウミギ(宮城県、福島県、栃木県、茨城県)
トウキミ(山形県、福島県、群馬県)
トッキビ(山形県)
トウムギ(栃木県)
ギョク(千葉県)
カシキビ(新潟県)
セイタカキビ(新潟県、和歌山県日高郡)
トウマメ(新潟県上越地方、長野県)
マメキビ(新潟県、岐阜県岐阜市、長崎県)
アブリキ(福井県大野郡)
フクロキビ(長野県、和歌山県)
モロコシ(長野県、山梨県)
コウライ(岐阜県、福井県、三重県、滋賀県)
トウナワ(岐阜県、富山県)
マルキビ(岐阜県)
コウライキビ(愛知県尾張、岐阜県)
ナンバト(愛知県三河)
ナンバン(愛知県東部、京都府北部、山口県東部)
ナンバ(近畿地方、三重県伊賀、岡山県、徳島県)
ハチボク(三重県伊勢、岐阜県、滋賀県)
ナキギン(鳥取県)
トウトコ(島根県)
サツマキビ(岡山県備)
マンマン(広島県、島根県)
コーリャン(香川県)
トウタカキビ(香川県高見島)
サンカク(熊本県)
マゴジョ(宮崎県)
イボキビ(鹿児島県甑島)
タカキビ(鹿児島県種子島)
ウランダフイン(沖縄県竹富島)
グシントージン(沖縄本島)
ヤマトトーンチン(沖縄本島)

特徴

イネ科の一年草。多日照でやや高温の環境を好む。発芽から3ヶ月程度で雄花(雄小穂)と雌花(雌小穂)が生じる。雄小穂は茎の先端から高く伸び、ススキの穂のような形状になる。雌小穂は包葉に包まれ、絹糸と呼ばれる長い雌しべが束状に包葉の先から出現する。トウモロコシのひげ部分は、この雌しべの花柱にあたり、その本数は実の数と一致する。花粉は風媒される。種子の色は黄・白・赤茶・紫・青などがある。

食材情報

原産地であるアメリカでは、トウモロコシは重要な主食作物とされ、種子を煮てすり潰し、パン生地に仕立てて食べるのが一般的だった。コロンブスによってヨーロッパに伝播すると、やはり製粉して調理されるようになった。代表的なものがメキシコのトルティーヤ、アメリカのコーンブレッドなどである。

日本では明治時代には入ってから、主に北海道で大量栽培されるようになったが、第二次世界大戦後にアメリカからスイート種の新品種が導入されたことによって、未熟トウモロコシ用の栽培が急増した。そのままゆでたり、焼いたりして食べるほか、コーンスープ、かき揚げ、炒め物、炊き込みご飯など調理範囲が広い。粒だけを冷凍した冷凍コーンやミックスベジタブルも広く流通している。

生産

世界のトウモロコシ生産量の約8億1700万トンの内、約4割を米国が占める。

2009年のトウモロコシ生産量世界上位10ヶ国は以下の通り。

アメリカ合衆国 333,010,910トン
中国 163,118,097トン
ブラジル 51,232,447トン
メキシコ 20,202,600トン
インドネシア 17,629,740トン
インド 17,300,00トン
フランス 15,299,900トン
アルゼンチン 13,121,380トン
南アフリカ 12,050,000トン
ウクライナ 10,486,300トン

飼料、デンプンや油脂原料の加工用トウモロコシについては、日本はほとんどを輸入に依存しているが、スイートコーンの年間国内生産量は25万~30万トンで推移しており、自給率は100%に近い。

品種

・ハニーバンタム
スーパースイート品種系の代表。ゴールドコーンとも呼ばれる。甘みが強く、様々な料理に向く。昭和40年代から全国で栽培されるようになった。品種改良により「ピーターコーン」が登場してから、生産が減少している。

・ホワイトコーン
ハニーバンタムの白粒種。シルバーハニーバンタムともいわれる。ハニーバンタムより軟らかく甘味がある。

・ピーターコーン
昭和60年代に登場。黄粒に白粒が混じるバイカラー品種。皮が柔らかく甘みがある。

・ベビーコーン
生食用品種を若採したもの。ヤングコーンともいわれる。水煮の缶詰としても売られている。

・味来(みらい)
イエロー系のスーパースイート種。平均糖度12度と甘みが強く、繊維が柔らかでジューシー。生食可能な品種の先駆け。

・恵味(めぐみ)
イエロー系のスーパースイート種。甘みが強く、フルーツのような爽やかさが特徴。

・みわくのコーン
イエロー系のスーパースイート種。味来と恵味の中間的な特徴を持つ。繊維が柔らかくシャキシャキとして、糖度が高いがさっぱりとした味わいが特徴。

・サニーショコラ
糖度15度以上と甘みが強い。生食可能。

・ウッディコーン
黄粒に茶色の粒が混じるバイカラー品種。粒がしっかりしているので、歯ごたえがある。

・ゴールドラッシュ
実が柔らかく、糖度の高い品種。生食可能。

・ミエルコーン
粒の皮が薄いため口当たりが柔らかく、糖度の高い品種。生食可能。ミエルとは、フランス語で「はちみつのような甘さ」の意。

・ピクニックコーン
味来の改良型で、平均糖度が18度以上と甘みが強く、小振りな品種。生食可能。火を通した後に冷やすことにより甘みが増加する。

・ゆめのコーン
実が柔らかく糖度の高い品種。生食可能。

・カクテルコーン
黄・白粒が混ざり、実が柔らかく糖度の高い品種。生食可能。

・甘々娘(かんかんむすめ)
糖度が高く、生でも食べられる品種。時間経過による糖度の低下が遅い。発芽率が低いため、栽培が難しい品種。

・ピュアホワイト
「白いトウモロコシ」「幻のトウモロコシ」とも呼ばれる。真っ白な実と極めて強い甘みが特徴。平均糖度は15度で、多いものでは19度にもなる。黄粒のトウモロコシの花粉が混ざらないように隔離して育てる必要があることから、栽培が難しく、生産量も限定されている。生食が可能で、みずみずしくジューシーな味わいが魅力。

・雪の妖精
ピュアホワイトの進化型。平均糖度17度と強い甘みが特徴。

・ホワイトショコラ
ピュアホワイトの進化型。平均糖度17度。

なお、ポップコーンの原料になる爆裂種、飼料やデンプン(コーンスターチ)の原料になる馬歯種や硬粒種、糯種は、スイートコーンとは別品種である。

主産地

2012年の都道府県別スイートコーン収穫量は以下の通り。

北海道    121,300トン
千葉県    17,800トン
茨城県    14,200トン
群馬県    10,300トン
長野県    10,300トン
山梨県    9,190トン
埼玉県    5,530トン
愛知県    5,490トン
栃木県    5,030トン
宮崎県    4,910トン

栄養

糖質、たんぱく質が主成分。胚芽の部分に、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、カリウム、亜鉛、鉄、リンを含む。リノール酸(多価不飽和脂肪酸)やオレイン酸(一価不飽和脂肪酸)を多く含有する。セルロースが多く、食物繊維が豊富。トウモロコシのひげの部分は、漢方では「南蛮毛」と呼ばれ、利尿作用や血圧降下作用があるといわれる。

選び方

皮の緑色が濃く、ひげが褐色または黒褐色のものが完熟している。先端までびっしりと実がついて隙間がないもの、ふっくらツヤツヤしたもの、手で持った時にずっしりと重みがあるものを選ぶ。鮮度が落ちるのが早く、収穫後24時間経つと栄養が半減し、味も落ちる。「トウモロコシは鍋を日にかけてから採りにいけ」といわれるのはこのためである。