ウリ科キュウリ属
胡瓜、Cucumber
主産地:宮崎、群馬、高知、埼玉、福島
旬時期:5月~8月
基本情報
原産地はインド西北部とされる。栽培の歴史は古く、西アジアでは3000年前から栽培されていた記録がある。ローマ帝国には紀元前3〜2世紀頃に伝わったとされ、紀元前1世紀頃には、ギリシャ、ローマ、小アジア、北アフリカで栽培されるようになった。ローマ皇帝のティベリウスはキュウリが好物だったとされる。ヨーロッパ北部への伝播は比較的遅く、紀元9世紀頃にフランス、14世紀頃に英国、16世紀頃にドイツへと伝播した。中国には紀元前122年、漢の武帝の時代にシルクロードを経由して伝わり、6世紀頃までに一般に普及したとされる。8世紀、唐の玄宗皇帝の時代には、すでに早作りの技術が発達していた。インドを経由して中国・華南に伝播した華南系、シルクロードを経由して中国・華北に定着した華北系があり、日本には紀元前10世紀前、華南系が遣唐使によって伝えられたが、苦味が強いこともあり、徳川光圀は「毒多くして能無し。植えるべからず。食べるべからず」、貝原益軒は「これ瓜類の下品なり。味良からず、かつ小毒あり」と書いている。17世紀の幕末から明治時代にかけて華北系が伝えられると、華北系と華南系の交雑が進み、両者の長所を併せもった品種が現れ、一般に普及するようになった。第二次世界大戦後は温室栽培が盛んになり、年間を通じて流通するようになった。
名称の由来
「黄瓜(きうり)」が語源とする説が有力。通常食べられている緑色のものは、黄色く熟れる前の未熟果で、かつて日本では、黄色く熟れた状態で食用にされていたとされる。胡瓜の「胡」という字は、シルクロードを渡って来たことを意味しているとする説もある。
特徴
一般的に華北系の品種は、果皮が薄く、みずみずしい肉質で歯切れもよいことから、生食に適している。華南系の品種は果皮が厚く、肉質が粘質で歯切れも良くないことから、華北系の品種が多く流通するようになった。市場では、表面のトゲのようなイボの色で区別されるようになり、華南系品種を黒イボ、華北系品種を白イボと呼ぶ。また、かつては表皮にブルームと呼ばれる白い粉がついていることが一般的だったが、農薬と間違われることが多く、見た目もよくなかったことから、ブルームレスの品種が開発され、現在では、流通の大半が白イボ(華北系)のブルームレスで占められるようになった。しかしブルームは本来、雨や乾燥から表皮を守るために生成される成分で、これがなくなったことから、果皮が硬くなり、果肉が柔らかくなってしまった。ブルームのあるキュウリの方が歯触りがよく、本来のおいしさを持ったキュウリとして見直され始めている。
食材情報
生食で利用されることがほとんどで、もぎたてのみずみずしさ、パリパリとした歯触りが魅力。成分のほとんどが水分なので、収穫してから時間が経って蒸発すると味も食感も極端に落ちる。サラダや酢の物、漬け物などの生食が多いが、中華料理では炒め物にも利用される。
品種
・ 白イボキュウリ
流通の9割を占める。表皮の緑色が鮮やかで皮が薄く、歯触りがよく、果肉は柔らかでみずみずしい。露地栽培、促成栽培、温室栽培が全国で行われ、年間を通じて流通している。
・四葉(スーヨー) キュウリ
中国北部・中部の品種。表面にシワやイボが多く、鮮度落ちが早いが、歯切れの良さが特徴で漬け物に向く。本葉が四枚ついた頃から実が成ることに由来。
・四川キュウリ
四葉胡瓜の改良種。表面にシワが多く、歯切れが良い。大きさは白イボキュウリと同じくらい。
・もろきゅう
もともと料理名だったが、生食用に若採したキュウリの通称としても使われる。多くが黒イボ種。
・加賀太キュウリ
果長22〜27cm、果径6〜7cmにもなる白イボ系の大型品種。石川県の伝統野菜だが、歴史は比較的浅く、昭和11年に金沢市久安町の米林利雄氏が東北の短太系キュウリの種子を栽培したのが始まり。その後、地元の金沢節成りキュウリとの自然交雑によって、現在の加賀太キュウリが生まれた。果肉は厚いが柔らかく、果肉の食味がよく、肉詰めや煮込み料理、漬け物などに利用される。
・フリーダム
イボなしで表面がツルツルした品種。青臭さがなく爽やかな食味。
・ロシアキュウリ
ヨーロッパで多く栽培されている品種。長さ10cm前後で太め。皮がやや硬く、肉質は締まっている。
・マーケット・モア
米国やカナダで一般的に栽培されている露地キュウリ。日本でも一部で流通している。
・コルニション
ヨーロッパ種の小さいキュウリで、日本にはピクルスにした状態で輸入されているのみ。
・ラリーノ
長さ9〜10cm、 直径12.5cm程度の節成りミニキュウリ。2008年に発売された。果皮にはイボがなく濃緑色でつやがある。青臭さが少なくみずみずしい食味で、サラダやサンドイッチに向く。
・花丸キュウリ
長さ3cm程度の幼果で、花をつけたまま売られる。関西では花つきキュウリとも呼ばれる。見た目の華やかさから、刺身のつまやあしらいに使われる。
・葉つき花つきキュウリ
幼葉と花がついているもので、花丸キュウリと同様、刺身のつまやあしらいに使われる。
・勘次郎キュウリ
山形県真室川町の伝統野菜。明治時代初期、この地区の姉崎勘次郎家に隣村から嫁いだ女性が携えてきたのが始まり。全国的にも今や珍しい黒イボ系の品種。果皮は黄色みがあり、皮が柔らかく、果肉は水分を多く含んでみずみずしい。青臭さやえぐみもないので、生食に適している。サラダや浅漬け、漬け物に利用されるほか、地元の洋菓子店では、コンポートやジュレに加工して販売している。
・毛馬(けま)キュウリ
摂津国毛馬村(現・大阪市都島区毛馬町)が発祥の地とされる黒イボ系品種。「なにわの伝統野菜」に指定されている。果長は30cm以上にもなるが、まっすぐに伸びたものが少ないことから、商品としてはわずかしか流通していない。一般的な白イボ系のキュウリに比べ、水分が少なめで歯触りがしっかりしているため、漬け物や酢の物に向く。
・佐久古太(さくこだい)キュウリ
長野県佐久市の伝統野菜。ずんぐりした形状で、色は黄緑。香りと歯ごたえの良さが特徴。現在ではあまり流通していないが、栽培を復活させようと自治体が苗の配布を行なっている。
・大和三尺(やまとさんじゃく)キュウリ
明治時代、奈良県で交配育種された品種。果長は90cm以上にもなる長型品種。昭和中頃まで栽培されていたが、現在では奈良漬加工用として契約栽培されている。
主産地
キュウリは全国で栽培されているが、主な産地は宮崎県と群馬県。年間約90万トン生産されている内、約6割がビニールハウス等の施設で栽培されている。一人あたり消費量は日本が世界一。
2013年の都道府県別キュウリ収穫量は以下の通り。
宮崎県 64,700トン
群馬県 55,900トン
高知県 24,600トン
埼玉県 48,200トン
福島県 41,700トン
神奈川県 10,300トン
千葉県 32,800トン
佐賀県 11,200トン
茨城県 28,400トン
山形県 15,400トン
栄養
キュウリの成分の約95%は水分で、ビタミンCやカリウム、ベータカロチンなどが含まれるが、含有量は非常に少ない。キュウリにはビタミンCを破壊するアスコルビナーゼという酵素が含まれるというのが通説だったが、この酵素はビタミンCを酸化するだけで、参加されたビタミンCは体内で再び還元され、酸化する前のビタミンCとほぼ同様の働きをすることがわかっている。現在ではアスコルビナーゼという名称は使われていない。カリウムは利尿作用があり、また水分が多いことから、解熱作用があるとされる。
選び方
イボ(トゲ)がチクチクと鋭く、切り口がみずみずしく、表面に張りと弾力のあるものが新鮮。持って見てずしりと重いものの方が水分を多く含む。乾燥と低温に弱いため、ビニール袋に入れて冷蔵庫に保存し、なるべく早めに消費する。
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