スズキ目スズキ亜目目アジ科ブリ属
間八、勘八、Greater amberjack
生息域:関東以南〜九州
旬時期:7月~10月
調理法:刺身、寿司、しゃぶしゃぶ、照り焼き、塩焼き

カンパチ

基本情報

ブリやヒラマサと並び、ブリ御三家と呼ばれるカンパチ。中では最も脂が少ないが、身が引き締まって品の良い旨さがあり、また日本近海ではブリやヒラマサより漁獲量が少ないこともあって、特に天然ものは高級魚として珍重される。夏の盛り頃から、やがて中秋にかけ、相模湾・外房で獲れ始めると、いよいよ本格的に脂が乗り始め味が良くなる。刺身や寿司はもちろん、しゃぶしゃぶや照り焼きも美味。

名前の由来

左右体側に太い暗褐色の線があり、顔を正面から見ると八の字に見えることから「間八」と呼ばれる。成長につれて名前の変わる出世魚。関東では、35cm以下のものをシオッコ、60cmまでをシオゴ、80cmまでをアカハナ、80cm以上のものをカンパチと呼ぶ。関西では、60cmまでのものをシオ、60cm以上のものをカンパチと呼ぶ。

地方名も数多く、ヒヨ(神奈川)、アカイオ(北陸)、シオ(東海~関西の若魚の呼び方)、アカハナ(和歌山・高知)、チギリキ(和歌山)、アカバネ(香川)、アカバナ(関西~九州)、ニリ(宮崎)、ニノコ(鹿児島)などがある。稚魚はブリと同様に流れ藻につくことから「モジャコ」(藻雑魚)と呼ばれる。

特徴

全長1.5m。ブリの仲間では最も大きくなる。体は長楕円形で、前後に長く側扁している。頭部に目を通る黄色い線が走るのが特徴だが、成魚では不明瞭になる。ブリやヒラマサよりもやや体高が高く、目が吻と尾の中央を結ぶ線よりも上に位置し、尾びれの下葉の先端が白い。体表は光沢のある細かい鱗に覆われ、側線鱗数は約150に達する。体色は背側が黄褐色、腹側が銀白色をしている。沿岸から沖合の中層層を群れで回遊するが、ヒラマサよりも沖合性が強く、より暖かい海域を好む。成長に適した水温は摂氏20~30度。地中海やメキシコ湾を含む全世界の熱帯・温帯海域に広く分布する。春から夏に日本列島を北上し、初冬から春に南下する季節的な回遊を行う。日本近海での産卵期は3~8月。分離浮遊卵を産み、孵化直後は沖合表層でプランクトンを捕食するが、稚魚になるとブリと同様に流れ藻等の浮遊物につき、動物プランクトンを捕食して成長する。成魚は沿岸域の水深20~70mに多く、イワシ、アジ、イカナゴなどの小魚や甲殻類を捕食するようになる。

食材情報

旬は夏から秋。ブリやヒラマサと比べても漁獲が少なく高級魚とされる。近年では養殖も盛んに行われており、市場にでているもののほとんどが養殖ものである。天然ものと養殖ものの見分け方は、外形では、天然ものは尾びれの切れ込みが鋭く三角形になっているが、養殖ものは、尾びれの切れ込みが浅く丸みを帯びている。体も天然ものが精悍であるのに比べ、養殖ものは太ってずんぐりしている。サクは、天然物の身は淡いピンクを帯びているが、養殖ものは脂肪が多いので白っぽい。

カンパチを食べるなら、刺身が一番である。血合いが美しく、脂に甘みがある。新鮮なものはシコッとした食感のある白身である。締めたばかりのものは歯ごたえがいいが、締めた後に1~2日間熟成させたものが旨みがある。関東では秋のシオッコが好まれる。昆布出汁で身を泳がせるカンパチのしゃぶしゃぶや、甘辛く煮つけたものも美味。ブリと同様、大根と煮てもいい。程良く脂が乗っているので、照り焼きや幽庵焼き、西京焼きにしてもよく、カマの部分は塩焼きが旨い。身を卸した後の頭や骨はアラ煮にしてもよく、また刺身で残った身は唐揚げや南蛮漬けにしてもよい。房総では1kgサイズのものを開き干しにしたカンパチの干物がつくられている。

関東以南から九州にかけて分布しているが、外房産のものの評価が高い。カンパチは小ぶりのものが旨く、3kg前後のものがベスト。3.5kgを超えると大サイズとなり、5kg以上になると大味となる。市場でも養殖ものが多いが、天然の上物は、海水の中で泳がせ、トラック便で活けの状態で市場に輸送されてくることが多い。しかし本当に旨いのは、上手に活け締めしたものを、1~2日間熟成させたものである。養殖魚では、シマアジ、カンパチ、ブリの順位で値段が高い。養殖ものの主産地は鹿児島湾で、国内の約6割を鹿児島が養殖・水揚げしている。愛媛や三重でも養殖がおこなわれている。

養殖カンパチ生産量日本一の鹿児島県では、様々な漁協が養殖カンパチのブランド化を進めている。鹿児島・錦江湾は、年間を通じて気候が温暖であり、平均水温22.4度とカンパチの生育に適している。潮流が早く、新鮮な海水が絶えず行き渡り、また深海湾であることから、沿岸近くの養殖場であっても水深帯にいけすを設置でき、漁場環境が良好に保たれている。

鹿児島県・垂水市漁業協同組合の「海の桜勘かんぱち」は、鹿児島県産のお茶を餌に配合。お茶を与えることによって、鮮度が保たれやすくなり、ビタミンEが増加し、コレステロール含量が減少。 また魚臭さがなくなり、身質の透明感が増したとされる。鹿屋市漁業協同組合の「かのやカンパチ」は、稚魚を導入してからはMP(モイストペレット)を、仕上期には、飼料メーカーと独自に開発したEP(エクストルーダーペレット)を給餌することで、脂の乗りが良く、歯ごたえの良いカンパチを出荷している。根占漁業協同組合の「ねじめ黄金カンパチ」は、霧島屋久国立公園区域内にあるロケーションを活かして、黒潮の流れが速く外海に近い、自然のままの環境で育てられた天然に近いカンパチの養殖を進めている。西桜島漁業協同組合の「桜島かんぱち」は、養殖履歴の開示・データベース化、出荷時の水産医薬用品の残留検査、水質観測システムの導入、配合飼料の統一化を行い、品質向上と肉質の統一化を図っている。

天然カンパチでキロあたり1200~1300円、鹿児島の養殖もので1200~1300円と変わらず、唐津の定置網で漁獲された天然ものはキロあたり800円程度で取引される。大分・豊後のものは高価でキロ2500円前後をつけることもある。腹がしっかりして、色艶のいいものを選ぶこと。血合が鮮紅色なら新鮮。鮮度が低くなると血合の赤が黒ずんでくる。

青背魚の一種で、中性脂肪やコレステロール低下作用がある不飽和脂肪酸のDHAやEPAが豊富で、生活習慣病予防の観点からも注目されている。たんぱく質、ビタミンB12、ナイアシン、カリウム、カルシウム、DHAを多く含有する。

漁獲法

釣りや定置網などで漁獲される。群れの中の1匹の行動が止まると、ほかの個体もそこに留まる習性があり、釣りの際は続けて釣りやすい。船釣りや磯釣りの好対象魚で、伊豆半島や九州などで人気。関東ではシオッコと呼ばれる若魚をコマセ釣りで狙う。伊豆諸島などでは、1mサイズのものを生き餌で釣り上げる。