フグ目カワハギ科カワハギ属
皮剥、Thread-sail filefish
生息域:太平洋側では三陸地方から九州まで 日本海側では秋田以南九州まで
旬時期:10月~1月
調理法:刺身、煮つけ、鍋、塩焼き、ムニエル、天ぷら(長崎天ぷら)

カワハギ

基本情報

フグの仲間で、食感も味もフグに匹敵するとされる。カワハギは肝から食べるといわれ、薄い琥珀色でトロリとした食感の密度の濃い旨みは「海のフォアグラ」と呼ばれるほど。冬に備えて餌を多く食べ肝が太る晩秋に旬のピークを迎える。この時期のカワハギは肝の大きさで値段が決まる。肝を霜降りにしてポン酢醤油、浅葱ともみじおろしで食べてもよく、活け締めにした弾力のある身は薄造りにして、肝醤油で食べるとこたえられない旨さ。鍋ものの材料としてもよく、またムニエルやフライにしても美味な魚である。

名前の由来

皮がザラザラとして厚く、剥いで料理することに由来する。別名にウシヅラ、カワハゲ、キュウロッポ、ゲバチロ、スブタ、ハギ、ハゲ、バクチ、バクチウオ、マルハゲ、メンボウ、メイボなどがある。バクチやバクチウオなどの名称は、皮がすぐ剥がれることから博打に負けて身ぐるみ剥がされる様を連想させることに由来する。

特徴

表面水温24度以上の暖かい海で産卵する。1回の産卵で直径1mm程度の卵を10万~200万粒産むが、成魚になるのは1%全長25cmほどになる。体は菱形で上下に平たい。背びれの第1条と腹びれが太く短い棘状になっている。オスは背びれの第2軟条が糸状に細く伸びることからメスと区別できる。体色は青灰色や褐色。個体によって黒っぽい縦じまがやまだら模様が入る。口は小さいが、歯は頑丈。鱗は小さな棘状で外皮はヤスリのようにザラザラとして厚い。北海道以南、東シナ海に分布し、成魚は水深50mより浅い岩礁域と砂地の混ざるところに生息する。食性は肉食性で、甲殻類、貝、ウニ、ゴカイなどを捕食する。口から砂地に水を勢いよく吹きも活動し、夜は海藻などを口にくわえて眠る習性がある。産卵期は5~8月で、砂底に産卵する。幼魚は岩礁域に生息し、流れ藻につくが、成魚になると岩礁の沖合で海底生活に移行する。

食材情報

フグの仲間で、食感も味もフグに匹敵するといわれるカワハギ。白身の肉は脂肪が少なく淡泊で歯ごたえがあり美味。秋になると活けのカワハギが市場を賑わせる。この時期は冬に備えて餌を多く摂るので、肝臓が大きく発達している。肝臓はピンク色で、脂肪分を多く含んでおり、こってりした旨みと甘みがある。この時期のカワハギは肝の大きさで値段が決まる。薄造りを肝醤油で食べると最高の味わい。寿司種としても人気で、この場合は活け締めのカワハギを握り、肝を溶かしこんだポン酢を少しかける。肝を腹に入れて醤油味で煮つける肝煮、味噌味で煮つける肝味噌煮も美味。肝の旨さを楽しむためには、鮮度が命なので、活け締めのものに限る。小型の魚なので、浜締めの状態にすると旨みは出てくるものの、身が緩んでしまう。肝臓が発達すると身がやせてしまうので、身だけを賞味するならば夏がよい。鍋もの材料としてもよく、ちり、すきやき、ブイヤベースになる。バターや油との相性がいいので、ムニエルやフライにも向くほか、中華料理では揚げた身をあんかけに料理する。干物にしても旨い。長崎では天ぷらにする。近種にウマヅラハギがいるが、関東ではウマヅラハギに対して本種を「本カワ」と呼ぶ。値段も本種のほうが高い。カワハギの肝の旨さは、もともと都会で人気だったが、近年では全国で人気となり、積極的に活けの状態で出荷されてくることとなった。

表面がザラザラしていれば新鮮。大きいものほど味がいい。20cm以上のものを選ぶこと。フグ科の魚だが、栄養的にもトラフグとよく似ており、身は高タンパク質・低脂肪。ビタミンB6、ビタミンD、カルシウムが豊富。脂肪酸やコレステロールの含有量は低い。産卵期後を除き、年間を通して入荷がある。活けのものは高価に取引される。養殖も積極的に行われるようになっており、長崎県では2002年から「生月ハギ」を出荷。定置網で獲れたカワハギのうち、100g程度のものを港内のイカダで畜養し、肝を十分に肥えさせている。

漁獲法

定置網、刺し網、釣りで漁獲される。千葉県富浦町に古くから伝わるがま口漁法は、餌で刺し2枚の網ではさんで獲るものである。

釣りの対象魚としても人気。カワハギは小さな口で餌を削ぎとるように食べるので、餌を食べる時の当たりが伝わりにくく、釣り上げるにはアタリパターンを見極めながらタックルや仕掛けを変えていく高度なテクニックが必要とされる。そのためゲーム性の高い釣りとされ、釣り人に人気が高い。ルアーフィッシングも盛んに行われ、カワハギ釣りの競技会が開催されている。神奈川県三浦半島ではカワハギを専門に船釣りが行われ、これが全国に広まった。竹岡沖のカワハギ釣りは特に人気が高い。三浦半島が東京湾に面していることから、餌はアサリのむき身がよく使われる。関西、九州ではエビのむき身が一般的。