十脚目セミエビ科ウチワエビ属
団扇海老、Flathead lobster
生息域:房総半島以南
旬時期:10月~11月
調理法:刺身、茹で、焼き、味噌汁

ウチワエビ

基本情報

主に西日本で見られるが、漁獲量が限られており、流通量が少ない。産地で消費されてきたこともあり、都市部での知名度が低いが、味はイセエビよりも上とされるほど美味なエビである。半透明の白い身肉は甘くとろけるような味わい。活けのものは刺身にして良く、茹で、焼きのほか、味噌汁にしても良い出汁が出る。

名前の由来

形状が団扇(うちわ)の形に似ていることに由来する。やはりその形状から、セッタ、キンチャクエビの別名を持つほか、水揚げされると尾の部分を激しくバチバチとはたくように暴れることから、パチパチエビ、ハタキエビ、バタバタと呼ばれることがある。

特徴

体長20cm程度。頭胸部、腹部ともに押しつぶされたような平たい円盤形で、上から見ると和名通り、団扇(うちわ)のような形状が特徴。体表は堅い外骨格に覆われ、頭胸部の側縁は鋸歯状で、10~12歯を持つが、近縁種のオオバウチワエビでは6~7歯。体の前方中央と頭胸甲の左右に大きな切れ込みがある。前方中央の切れ込みにヒゲ状の第1触角があり、つけ根に小さな複眼がある。複眼より前の板状の部分は第2触角である。歩脚と腹脚は短い。房総半島からオーストラリア近海にかけて分布し、水深10~100mの砂泥底に生息する。海底を歩行して生活する。肉食性で、貝類や多毛類などを捕食する。産卵期は秋で、卵は雌が腹脚に抱えて保護する。孵化後のフィロソーマ幼生は外洋を漂いながら成長し、着底した後に成体に変態する。

食材情報

産地で消費されてしまう隠れた逸品。扁平な形状だが、身が詰まっており、身は半透明の白色で甘みと旨みが強い。主に西日本で漁獲されるが、漁獲量は多くなく産地で消費されてきたため、都市部での知名度は低い。しかし味は伊勢海老よりも上とされるほど美味なエビである。活けのものは刺身にすると、とろけるような味わい。茹で、焼きのほか、味噌汁にしても良い出汁が出る。秋に産卵期を迎えるため、冬から初夏頃までが身が充実するが、長崎県五島では、10月1日~11月末までが漁期と決められており、この時期が旬となる。

市場での評価

西日本の産地で消費されることが多く、都市部ではあまり見られない。漁獲量が少ないため、市場では高値がついている。近縁種のオオバウチワエビも日本近海に分布しており、国内の市場ではこの二種を特に区別せずに取り扱う。台湾からは冷凍のむき身が輸入されている。

漁獲法

底曳網、刺し網で主に漁獲される。