カサゴ目アイナメ科ホッケ属
Atka mackerel、Arabesque greenling
生息域:茨城以北の太平洋沿岸、日本海沿岸
旬時期:1月~4月
調理法:干物、ルイベ、煮つけ、フライ、ムニエル

ホッケ

基本情報

鮮度と味が落ちやすいため、流通や冷蔵技術が発達していない時代には、産地以外では食用にされてこなかったが、流通技術の進歩した現在では、美味な魚として人気。特に干物は居酒屋などでも人気のメニューとなっている。産地では刺身(ルイベ)などにされ、その味わいは「白身のトロ」といわれるほどである。価格も手ごろなので、フライや煮つけ、ムニエル、ちゃんちゃん焼きなど、家庭の惣菜魚として人気である。

名前の由来

海の表層に群れる幼魚が美しい青緑色をしていて花のように見えることから、魚偏に花の漢字が当てられたとされる。「北方の魚」の意で「北方」と表記されることもある。体長5~15cm前後のものをアオボッケ、20cm前後のものをロウソクボッケ、20~25cm前後のものをハルボッケ、それ以上の大きさのものをネボッケと呼ぶ。成長にしたがって、アオボッケ、ロウソクボッケ、マボッケ、ネボッケと呼び名が変わる。地方名には、タラバホッケ、チュウホッケ、ドモシジュウ、ホッキ、ボッケアなどがある。

特徴

全長60cm程度。体はやや細長い紡錘形で、体表に側線が5本走り、体側に不明瞭な黒色の横帯がある。茨城以北の太平洋沿岸、日本海沿岸、黄海、千島列島周辺に分布し、日本近海に生息するものは、分布域や産卵時期の違いから4つの系群に分けられている。

(1)沿海州系群: ユーラシア大陸東岸の沿海州沿岸に分布
(2)羅臼・太平洋系群: 襟裳岬西岸から千島列島、羅臼沿岸にかけて分布
(3)道南・本州系群: 道南沿岸から本州沿岸にかけて分布
(4)北部日本海・オホーツク系群:オホーツク海から日本海側の道北にかけて分布

沿岸の中層から底層に生息し、甲殻類や頭足類、二枚貝類などを捕食する。産卵期は北海道で8月から12月中旬頃。産卵期には婚姻色をした雄が縄張りを持ち、雌にに求愛運動を行う。水深20m以浅の岩の間に産卵し、産卵後は孵化するまで雄が卵を保護する。稚魚期には浅い海域にいて、体色は青緑色をしているが、成長につれて沖合の海底に移動し、体色は褐色を帯びる。成魚の大型のものは大陸棚付近に定着する。

奥尻島などでは、初夏から春の間にかけて、海面近くで群れになって上向きで泳ぐことにより渦巻きを発生させ、海面のプランクトンを引き込んで捕食する「ホッケ柱」と呼ばれる現象が見られる。

食材情報

鮮度低下が早いため、開いて干物などにするのが一般的。流通や冷蔵技術が発達していない時代には、ほとんど食用とされていなかったが、北海道近海でニシンが獲れなくなると、代替品としてホッケの需要が急増。戦後の食糧難の際には、大量に捕れる食材として重宝され、関東地方などに配給された。しかし冷蔵技術がまだまだ発達しておらず、また油っぽさが敬遠され、不味い魚とされてきた。しかし最近では、冷蔵や物流技術の発達、嗜好の変化に伴って、人気の魚のひとつ。特に国産のものは高値となっている。

身質はほどよく繊維質で、骨離れが良く、身肉に脂が乗って美味。鮮度の良いものはフライや煮つけ、ムニエルに料理される。みりん干しや粕漬けにも加工される。産地である北海道では、北海道などでは生のホッケがスーパーなどで販売されており、ちゃんちゃん焼きなども人気。ホッケの三平汁は、塩漬けにしたホッケの切り身を、野菜などと塩味の汁に仕立てたもの。産地では刺身にすることもあり「白身のトロ」といわれるが、アニサキスや旋尾線虫が寄生しているため生食は行われず、刺身にする時にはルイベにされる。麹と野菜などと漬け込んだ「いずし」、糠と塩で漬けた「ぬか漬け」や細く切ったものを潮風に当てて干した「とば」など様々な保存食にされる。また北海道などでは、すり身にされることも多く、団子やカマボコに加工される。

近縁種にキタノホッケ(シマホッケ)があり、ホッケ同様に食べられている。「根ほっけバキバキ」は、北海道のほっけブランドで、刺身で食べられる。北海道知床ではラウフィッシャーというゆるキャラがいる。

鮮度と味が急激に落ちる。魚体に光沢があるもの、腹が白く、しっかりと硬いものを選ぶ。腹が柔らかいものは鮮度が良くない。表面にぬめりのあるものは脂が乗っている。最近では活け締めのものが市場に入荷されることがあり、比較的高価に取引される。またネボッケと呼ばれる大型のものは、鮮魚でも干物でも非常に高値がつく。アメリカ・ロシアなどからも輸入されている。

脂っぽい食感に対して、脂肪・たんぱく質ともにそれほど多くない。ビタミンB12、ビタミンD、ビタミンEを豊富に含有し、カリウムやリン、鉄、銅、亜鉛などのミネラルも豊富。

市場での評価

開きなどの加工品で流通することが多いが、近年では、鮮魚の入荷も増えており、活け締めのものなども入荷しているが、この数年であまり見かけなくなった。値段は全般に安かったが、現在では年々高騰している。定置網もので1000~1500円。

漁獲法

底曳網、巻網、定置網で主に漁獲される。主要産地は北海道で、国内の水揚げの90%が北海道で行われている。次いで青森県、秋田県。1980年代に30万トン程度で推移していた国内漁獲量は、2010年代に入ると水温上昇や乱獲のために漁獲量が激減し、2013年には約5.3万トンと、15年間で78%減少している。北海道では養殖も行われている。海外からのシマホッケの国内流通が増えている。