カサゴ目コチ科コチ属
鯒、牛尾魚、鮲、Bartail flathead
生息域:南日本
旬時期:7月~8月
調理法:刺身、寿司種、塩焼、ちり鍋、天ぷら

マゴチ

基本情報

透明感のある白身は、シコシコとした歯触りと淡泊な味を持ち、夏の白身魚としてスズキよりも高価に取引される高級魚。活けのものを薄造りや洗いにして良く、千葉県房州産の活けものは特に評価が高い。両頬にある「コチの頬身」は珍味として珍重される。塩焼きや鍋にしても美味。

名前の由来

貴族が正装で身に着けていた笏(しゃく)い形が似ていることから、笏(こつ)が転訛したとされる。また頭を表す「こつ」に由来するという説、骨っぽいことから「骨(こつ)」に由来するという説がある。漢字は外敵に遭うと飛び跳ねるように逃げる様が「踊る」ように見えたことからできた。外形が牛の尾のような様であることから「牛尾魚」とも書く。市場では「真ゴチ)」「本ゴチ」と呼ばれる。別名にガラゴチ(瀬戸内)、クロゴチ(岡山)、ゼニゴチ(長崎)、ムギメ(四国)、ヨゴチ(富山)などがある。

特徴

全長50c程度、最大1mほどになる大型種。左右に平たい体で、体の幅は鰓蓋野部分が最も大きく、尾部に近づくに従って細くなる。下顎の先端が丸く、両目の間隔が広い。胸びれは大きく丸みがあり、褐色の小さな斑点がある。背びれは2条に分かれる。熱帯から温帯の海に広く分布し、国内では太平洋岸の房総以南、日本海岸の新潟以南の沿岸に見られる。水深30mくらいの海底に腹をつけて生息する底生魚で、背側の体色は周囲の環境に合わせた保護色となっている。産卵期は4月から7月。雄性先熟で、生後2年で40cmを超える頃に雌に性転換する。食性は肉食性で、貝類、甲殻類、頭足類、小魚などを捕食する。同じコチ科の魚にメゴチやオニゴチがいる。

食材情報

身が締まり、透明感のある白身はさっぱりと上品な味わいで、非常に美味。シコシコとした歯触りと淡泊な味が魅力なので、活けのものを薄造りや洗いにすると美味。特に房州産の活けものは上物として評価が高い。皮も旨いので、湯引きにして細切りにしたものを添えることが多い。両頬にある丸い身は「コチの頬身」といって絶品といえる旨さ。塩焼きにしても美味。肝は椀種にされる。近年では年間を通じて流通しているため、冬の時期にちり鍋に料理される。白身がポン酢とよく合ってこれも美味。長崎県などでは衣に味つけをして天ぷらに揚げる。岡山県ではコチを茹でて身をほぐし、野菜などを入れたものを飯にかける「コチのかけ飯」という郷土料理がある。

30~40cm程度のものが身質が良いとされる。痩せたコチは味が落ちるので、小型でも丸々と太ったものが良い。野締めのものは身が白濁する。春の産卵期を終えてから身が太り始め、旬の最盛期を迎えるのは7~8月。

高タンパク質低脂肪の白身魚。たんぱく質の形成に使われるビタミンB6を多く含有するほか、カリウムやマグネシウム、亜鉛などのミネラルも豊富である。

市場での評価

年間を通じて入荷されるが、旬を迎える初夏から秋に多い。活けのものは特に高価に取引される。

漁獲法

釣りや投網、地引き網、底引き網などで多く漁獲される。遊漁魚としても人気が高く、関東では千葉県内房でエビやネズミゴチの生餌で釣るくわせ釣りが行われるほか、ルアーフィッシングの人気。夫婦仲が良いとされ、相模湾などでは一匹を釣るともう一匹が針にかかるといわれる。