スズキ目タチウオ科タチウオ属
太刀魚、立魚、Cutlass fish
生息域:北海道以南から日本各地
旬時期:8月~9月
調理法:刺身、塩焼き、バター焼き、ポワレ

タチウオ

基本情報

太刀に形が似ることから「太刀魚」と名付けられたといわれ、銀白色に輝く細長い魚体を持ち、背びれを波打たせて泳ぐ。夏に旬を迎え、脂肪が多いがあっさりした上品な味の白身魚である。新鮮なものは刺身にしてよく、皮の層に旨みがある。また塩焼きやバター焼きなど様々な料理法で賞味される。

名前の由来

体が細く銀白色に輝き、太刀に似ていることから「太刀魚」と呼ばれる。異説では、頭を上にして泳ぐため「立ち魚」と呼ばれたとするものもある。地方名にサーベル(福島)、たちのうお(東京)、だつ(秋田)、はくなぎ(宮城)など。

特徴

全長1.3mほどで、体型は薄く細い刀状。尾部は細く、先端は紐状になっている。背びれは1基で頭部から尾端まであり、美しく波立たせて泳ぐ。顔は鋭く、下あごが上あごより突き出して、両あごに鋭い切れ味のある歯を持つ。全身に鱗がなく、体全体が銀粉(グアニン色素)に覆われている。このグアニン色素は模造真珠などに使われるグアニン箔という塗装材料になる。やや青みがかった光沢を持つが、死ぬと灰色がかった銀色となる。世界中の暖海域に広く分布し、水深100~200mの陸棚域に群棲するが、河口などの汽水域まで入り込むこともある。夏の産卵場所とう湯の越冬場所の間を回遊する。産卵期は春から秋で、旬も産卵期に重なる。稚魚や幼魚は甲殻類の浮遊幼生などを捕食するが、成魚は歯が発達し、小魚やイカ、甲殻類を食べる。成魚は、夜間は海底にいて日中になると浮上し、朝夕は海表近くまで餌を求めて行動するが、幼魚は、日中は海底から100m ほどの場所で群棲し、夜になると浮上する。潮流が穏やかな場所では立って泳ぐことがある。

食材情報

新鮮なものは刺身が旨い。皮に旨みがあるので、銀皮造りにするとよい。淡泊な味わいで、塩焼きやバター焼き、蒲焼、竜田揚げ、粕漬けなどいろいろな料理に利用できる。身の高さを指の本数で表す。3本(指3本分の体高)ならば三枚に卸せないので、ぶつ切りにして唐揚げなどに調理される。5本以上で三枚に卸すことができ、刺身などで賞味される。6本の高さを持つものは、釣り人の間ではドラゴンと呼ばれる。大分では腹骨ごとぶつ切りにした背ごし、和歌山・兵庫・熊本などでは、寿司や酢の物にも用いられる。和歌山県有田市周辺では、骨ごとすりつぶして揚げた「ほねく」(「ほね天」)と呼ばれる揚げかまぼこが売られている。フランス料理ではポワレになる。瀬戸内海産が美味とされるが、近年は減少傾向にあり、和歌山・愛媛・大分・長崎での水揚げが多い。熊本県芦北町の「田浦銀太刀」は特に有名。八代海が育んだ海の幸が水揚げされる田浦漁港。一匹一匹ていねいに釣ったタチウオの中でも、選り抜きのものを田浦銀太刀と名づけたもの。八代海は九州本土と天草の島々に囲まれた穏やかな内海で、温暖な気候と球磨川水系から流れ込む栄養豊かな水質によって、豊富な餌を食べて立派なタチウオが育つ。肉厚で身が締まり、脂が乗った田浦のタチウオをブランド化するために、組合員は「これ以上の太刀魚あったら、出てこい!」というキャッチコピーをつけ、その魅力をアピールする。また長崎県五島灘北部の小値賀島にある漁場・白瀬で漁獲されたタチウオ「白銀(はくぎん)」は、大ぶりで新鮮さと上質の肉質を持つ。同じく長崎県の対馬東方海域は大型タチウオの宝庫。上対馬町漁業協同組合が出荷する銀太(ぎんた)は、曳き縄釣りで丁寧に釣り上げたタチウオ。身が厚く、鮮やかな銀色に包まれ、尻尾の方までしっかりと身がついている。香港などからの輸入物もあるが、国産物と比べると味は落ちる。国産のものは目が黒く、輸入物は目が黄色いことから判別できる。キロ当たり3000~5000円で取引される。

脂肪含有量が多く、DHAを豊富に含有するほか、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンEを多く含む。銀粉がはがれ落ちていなくて、銀色の輝きが美しいものほど鮮度が良い。体長1mほどで、600g前後のものが脂が乗って美味。1.5mを超えるものは大味になる。

漁獲法

日本近海では関西と瀬戸内海に漁場があるが、最も盛んなのは東シナ海で、底曳網、トロール漁、流し釣りで漁獲される。釣りの対象として人気が高く、関東以西では陸釣り、船釣りともによく行われる。陸釣りではキビナゴやイワシを餌にした夜間のウキ釣りが人気。ルアーフィッシングも盛ん。船釣りは、地域によって昼釣りと夜釣りに分かれる。東京湾・相模湾など関東地方では昼釣りである。関西地方の船釣りでは昼・夜ともに行われる。静岡では防波堤などから夜釣りで釣ることができ、地元の夏の風物詩となっている。両顎に鋭い歯を持つことから、タチウオを釣る時には軍手などの装備が必要である。