タイラガイ

カキ目ハボウキガイ科
玉珧、平貝、Pen-shel
生息域:東京湾以南
旬時期:12月~3月
調理法:刺身、寿司種、炙り貝、煮つけ

タイラガイ

基本情報

タイラガイの名前でよく知られる二枚貝。ホタテガイ同様、大きな貝柱を食用にする。固く引き締まった身質は歯ごたえがあり、濃厚な旨みと甘みがあり、生で刺身や寿司種、酢の物で賞味するほか、表面をあぶっても美味。ヒモはわさび醤油で刺身にするほか、醤油で煮つけても美味。九州では足なども食べられる。かつては有明海が一大産地として知られていたが、現在では激減している。バブル時代には1個1500円を超す値がつくほどで、現在では価格は下がっているものの、1個あたり400円~600円前後をつける高級貝であることは変わらない。

名前の由来

外形が平らな貝であることに由来する。関東の市場や寿司屋では「タイラガイ」の呼び名が一般的。地方名に、インジラッポ、ウチワッカイ、エビスガイ、エベスガイ、エボウシガイ、オオギガイ、オオギノカイ、オノガイ、カイバシラ、カラシヌビースクー、カラスガイ、カラスゲ、クソガキ、クソサライガイ、クワカキ、コトリガイ、ジランボ、タアラギ、タイラゲ、タイラベ、タチガイ、タチガエ、タッゲ、タテガイ、タテボラ、チャーラギ、テーラク、チェラゲェ、ババガキ、ババトリ、ババトリギャー、ヒイランボ、ヒョウゲ、ヒョロロ、ヒラッポ、ヒラブ、ヒランボ、フシガイ、フナワリカイ、ヘエナ、ヘラボウ、ヘランバー、ホウチョウガイ、ポンカキ、マサカリカイなどがある。

特徴

殻長35cm程度、殻高25cm程度に達する大型種。殻は先の尖った三角形で、貝殻は薄く、表面は暗緑色で光沢があり、殻の内面にはかすかな真珠光沢がある。細い放射状肋がある。日本に生息するタイラギには、殻の表面に細かい鱗片状突起のある型(有鱗型)と、鱗片状突起がなく殻の表面平滑な型(無鱗型)の二型が存在する。これらは同一種の形態変異と考えられていたが、1990年代にアイソザイム分析によって調べた結果、遺伝学上別種であることが判明した。また二型間の雑種も存在する。和名では有鱗型をタイラギ、無鱗型をスベタイラギと呼んで区別することがあるが、混同されていることも多い。外套膜はクリーム色や橙色で、長くて分厚い。内湾の水深10mくらいのところに生息し、尖った殻頂を泥底に突き刺さるようにして、小さな足から緑褐色10~20cmほどの長さの絹糸のような足糸を出して泥の中の濃い市を付着させて体を固定する。砂泥の上には殻の後端部が顔を出すのみとなる。有鱗型は沿岸域など砂質に多く生息し、無鱗型はやや深い海域の泥質に生息する。雌雄異体で、産卵期は7~8月。産み出された卵は海中に放出され、同じく放出された精子と受精する。孵化した幼生は海中を漂いながら成長し、やがて着底する。1年で殻長が10cm、2年で20cm、6年で30cm前後に成長する。日本では房総半島以南に分布し、内湾の10m~50m程度の水深に生息する。特に東京湾、伊勢湾、三河湾、瀬戸内海などが主要な生息地である。

食材情報

大きな閉殻筋(貝柱の部分)と外套膜(ヒモの部分)を食用にする。タイラギの貝柱はホタテガイと比べて身質が固く引き締まり、歯ごたえと濃厚な旨みが魅力。新鮮なものはつややかな透明感があり甘みが強く、生で刺身や寿司種にする。表面をあぶると歯ごたえと甘みが増すので、さっとあぶって酒肴にしても良い。バター焼きや天ぷらも美味。九州などではヒモや足を生食用として販売している。福岡県の筑紫漬けはタイラギの貝柱をみりん粕に漬けたもの。中国では広東料理や潮州料理でよく使われ、蒸したり炒めて調理することが多い。旬は春。寒くなるにつれて身が良くなってくる。夏は身がやせて味が落ちる。腸炎ビブリオによる食中毒が報告されることがある。

貝柱の部分に光沢と透明感のあるものが新鮮。時間が経つと表面が白っぽくなる。たんぱく質の量は貝類の中でトップクラスで、ホタテガイを上回る。高たんぱく質・低脂肪の典型的な貝。グリシン、アラニン、グルタミン酸など旨みを構成するアミノ酸が多く含まれている。血圧やコレステロールを下げるとされるタウリンも豊富に含有する。

市場での評価

貝柱の状態で、生あるいは冷凍で流通することが多いが、殻つきのものも少量ながら流通する。年間を通じて流通しており、韓国などからの輸入ものが多い。1個あたり800~1000円と二枚貝としては非常に高価。バブル期などには、築地市場で1個1500円を超す高値がついていた。韓国産などの輸入物が増えたことによって徐々に値が下がり、現在ではキロあたり高値で6000円程度で取引される。中身を確認するために、片方の殻を取った状態の片ムキで売られていることが多い。冷凍物が輸入している。。タイラギカクレエビというエビが入りこんでいることがある。

漁獲法

潜水漁や底曳き網で主に漁獲される。潜水漁では漁師がひとつずつ掘り出して採る。現在の主要産地は、三河湾、播磨灘、備讃瀬戸、伊予灘。かつては有明海が一大産地として知られ、1990年代までは潜水夫が手かぎを使って砂泥底から掘り出すタイラギ漁が行われていたが、現在では激減し、ほとんど漁獲されなくなった。特に諫早湾沿岸域では1993年から休漁が続いている。養殖の研究が進められ、2013年には人工種苗の孵化に成功し、実用化が待たれている。