古腹足目サザエ科
栄螺、Turban shell
生息域:秋田県以南
旬時期:3月~7月
調理法:刺身、焼き貝、茹で貝、煮つけ、炊き込みご飯

サザエ

基本情報

野趣溢れる磯の香り、身の甘みと歯ごたえが人気。新鮮なものは刺身にして良く、シンプルに壺焼きにしたものも人気。殻に角があるものとないものがあり、外湾で育ったものは角あり、内湾で育ったものは角なしとなる。角があるものの方が見栄えが良いため高価だが、味は変わらない。

名前の由来

殻が小さな家に見えることから「小(ささ)」「家(いえ)」で「ささえ」が転訛したとされる。漢字の「栄螺」は、螺が渦巻貝を指すため、大きくなった渦巻貝の意で当てられたと考えられる。

特徴

殻高10cm、殻径8cm程度。殻に角があるものとないものがあるが、角があるものは外湾で育ったもので、波の静かな内湾で育ったものは角がない。味は変わらないが、角があるものの方が見栄えが良いため、値段が高い。日本海側のサザエはあまり大きくならないが、太平洋側のものは殻高20cmを超えるものがある。

体の表面に黒褐色の線状の斑紋が多くあり、全体に黒っぽい。蹠面(足の裏面)は黄土色で、厚い石灰質の蓋を持つ。この石灰質の蓋の表面に渦巻き状のうねと多数の細かい突起がある。雌雄異体で、生殖線(身のワタを引き出したときの最後の部分)がクリーム色のものが雄、深緑色のものが雌である。

東アジアの海水温が高い海域の外海に面した岩礁域に多く生息する。日本近海では、太平洋側では千葉県房総半島以南九州まで、日本海側では秋田県男鹿半島以南で九州までに分布する。浅い場所には小型個体が多く、大型個体ほど深所に生息する傾向がある。夜行性で、日没と共に歩き回り、岩に付着した海藻を歯舌で削り取って食べる。海藻の種類によって殻の色が変化し、ホンダワラなどを食べるものは黒褐色に、アラメなどを食べるものは白みがかった殻色になる。産卵期は夏。

食材情報

磯の香りが強く、野趣に富んだ味わいが魅力。新鮮なものは刺身にして良い。壺焼きにすると、磯の香りが強く、身の甘みとワタのほろ苦さが相まって美味である。酒蒸しや醤油煮にしても良い。身を入れて炊きこんだサザエ飯は、島根県など各地でつくられる。肉が高価だった時代には、漁村で肉の代わりにサザエの身を入れたサザエカレーがつくられ、今でもご当地カレーとしてレトルト食品として販売されている。「サザエベシ」は蓋つきのまま身を取り出して塩漬けにしたもので、石川県輪島などでつくられている。島根県隠岐西ノ島の茹でサザエは海水でさっと茹でて食べるもので、これも美味。サザエの串揚げや味噌漬け、なめろうなどの郷土料理もある。小さいサザエを「姫サザエ」と呼ぶが、大小での味の違いはなく、用途によって使い分ける。旬は春から夏。

新鮮なものは、殻を振っても音がせず、蓋に触るとサッと蓋を閉じる。持って重いものは身が充実している。鮮度の劣化したものは、鼻を近づけると悪臭がする。

動物性食品に比較的低いカロテンを多く含むほか、老化予防に良いとされるビタミンEを多く含有する。疲労回復に良いとされるタウリンの含有量は魚介類中でトップクラス。またカリウムや亜鉛などのミネラル類も多い。

市場での評価

年間を通して流通しており、値段はやや高値で安定している。キロあたり800~1300円前後で取引される。200g以上の大きなものは高価。角のあるものはないものよりも、キロあたり100円ほど高い。漁獲後、水槽に保存してから出荷することが多い。80g以下のものがヒメサザエと呼ばれ、料理人によってサイズを選ぶため、市場では小刻みでサイズが分類されて売られている。

漁獲法

海女による潜水漁のほか、小舟から箱眼鏡で海底をのぞいて、長い柄のついた叉金の先端にはさんで獲る眼鏡漁が一般的である、見突き漁、はみ突き漁、金木(かなぎ)とも呼ばれる漁法である。

2002年度の主な陸揚げ漁港は以下の通りである。

第1位 下関漁港(山口県)
第2位 藍島漁港(福岡県)
第3位 八幡浜漁港(愛媛県)
第4位 宮窪漁港(愛媛県)
第5位 佐田岬漁港(愛媛県)