甲殻綱口脚目シャコ科シャコ属
蝦蛄、Francolin
生息域:北海道以南
旬時期:カツブシと呼ばれる卵が旨くなる5~7月頃、身が旨くなるのは11月
調理法:茹でシャコ、刺身、煮つけ、唐揚げ

シャコ

基本情報

江戸前の寿司種として親しまれるシャコ。ごく新鮮なものは刺身にして美味。またシャコツメと呼ばれる足の部分は旨みを凝縮したような濃縮な味わいで酒肴として人気が高い。卵巣はカツブシと呼ばれて珍重され、卵を持つ初夏が旬とされる。神奈川県・小柴のシャコの評価が高く、これしか使わないという江戸前の寿司屋も多い。三河湾や瀬戸内海のものも評価が高いが、いずれも漁獲量が減少しており、最近では北海道石狩湾産のシャコの流通が増えている。

名前の由来

茹でるとシャクナゲに似た紫色になることから、シャクナゲがシャコに転訛したとされる。青森や北陸ではガサエビ、福岡ではシャッパ、熊本ではシャクとも呼ばれる。

特徴

体長15cmほど。体型は細長い筒状になっており、腹部は扁平。外見は同じ甲殻類であるエビに似ているが、甲羅が小さく、付属肢にエビのようなハサミを持たず、第2胸足が補脚になっている。頭部先端には二対の触角と複眼が突き出している。尾節には鋭い棘のある尾扇を持つ。北海道以南の内湾や内海の砂泥底に生息し、水深10~30mの泥底にU字型の巣穴を掘って生活する。肉食性で、ほかの甲殻類や魚類、ゴカイやイソメなどの多毛類、貝類などを捕食する。捕脚ですくい上げるように獲物をとらえ、時には補足を叩きつけて甲殻類の甲羅や貝殻を叩き割る。産卵期は5月から7月。直径0.5mmほどの卵を約5万粒ほど産む。メスは卵塊をかかえ、孵化するまでの約1ヵ月間守る。

食材情報

エビよりもあっさりした味と食感で、塩茹でしたものは江戸前の寿司種として親しまれている。ごく新鮮なうちに刺身として生食することがある。殻がむきづらいため、活きの状態で瞬間冷凍したものを自然解凍し、シャーベット状になったものの殻をむく。しっとりとした身肉で磯の香を帯びた野趣溢れる味わいである。茹でて殻を切り開いて剥き、寿司種とすることが最も多い。生きているうちは青みを帯びた薄茶色だが、茹でると褐色に代わる。捕脚肢と呼ばれる足の部分はシャコツメといって、シャコのうまみを凝縮したような濃厚な味わい。一尾からわずかしかとれず、酒肴にしてよく、寿司で軍艦巻きなどでも食べられる。産卵期の卵巣はカツブシと呼ばれ、シコシコして硬い歯触りが珍重されるため、この時期はメスの方が高い値段をつける。ただし身はやせている。11月に入ると晩秋の脱皮に備えて身肉が充実する。この時期のシャコは丸々と太り、天然の車エビにも並ぶほどの美味。

死後時間が経つと酵素が分泌され、身を溶かしてしまう。これを防ぐために、新鮮なうちに茹でるなどして調理してしまう。 活きた新鮮なシャコは珍重されるが、棘が多く、勢いよく暴れるので、取扱いに注意が必要である。天ぷらや煮びたし、鍋物、味噌汁の具にしても美味しい。岡山県の郷土料理であるばら寿司に、地域や時期によって具材のひとつとして用いる。青森県では桜の花見にシャコを食べる風習がある。

東京湾、瀬戸内海、有明海などで獲れたシャコが上物として評価が高い。ほかに宮城県石巻、香川県観音寺が代表的な産地。特に神奈川県小柴のシャコの評価は高く、築地では最高級のシャコとされ、卸値は競りではなく相対取引で決められる。小柴のシャコしか使わないという江戸前の寿司屋も多い。ただし近年では漁獲量が減っており、北海道石狩湾産のものなどが増えている。北海道産のシャコは、刺し網で漁獲しているため大ぶりのものが多く、茹でてむき身にした状態で流通していることが多い。

産卵期前の初夏は、メスは子持ちのものが高い。卵を持ったものは殻に黄色い卵の一部がついているので区別できる。銅やマンガンなどのミネラル類、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2などの微量栄養素をエビ類よりも豊富に含む。

漁獲法

主に底曳き漁で漁獲される。打瀬船と呼ばれる三枚帆の船で、すきのついた網を曳く。国内の漁獲される主な海域は、三河湾・東京湾・瀬戸内海などであったが、いずれも漁獲量が減少している。東京湾では環境悪化により漁獲はゼロに近くなったが、漁獲量制限や二操一休(二日漁をして一日休む)の体制で資源の安定に努め、やや回復傾向にある。近年では北海道石狩湾での水揚げが増えており、1979年には300トンを超え、その後50トン前後まで減少したものの、1999年以降は90トン前後で安定している。石狩湾では刺し網で漁獲しているため、身の大きなシャコだけを漁獲することが可能になっている。