ネギ科ネギ属
玉葱、葱頭、Onion
主産地:北海道、佐賀、兵庫、愛知
旬時期:4月~5月

たまねぎ

基本情報

タマネギの起源は古く、エジプトやギリシャ、ローマで紀元前から栽培されていた記録がある。原産は中央アジア、西アジアなど諸説あるが、野生種はいまだに発見されていないことから、定かではない。古代エジプトでは、ピラミッドの建設に従事する労働者に、ニンニクやダイコンと共にタマネギが配給されていたという記録が残されている。ヨーロッパ全域に広まったのは16世紀以降とされる。日本に伝えられたのは江戸時代だが、当時は鑑賞用とされていた。スウェーデンの植物学者ツンベルクが1775年に著した「江戸参府随行記」に、タマネギが長崎で栽培されていた記録が残されている。本格的な栽培が始まったのは明治時代。北海道開拓使が明治4年、アメリカから導入した農作物のひとつに「イエロー・グローブ・ダンバース」というタマネギがあった。寒冷地での栽培に向くタマネギは北海道の気候に適応し、春蒔きタマネギ「札幌黄」が生まれた。大正時代初期には約500ha程度に作付されるようになり、その後、栽培技術の確立や農作業の機械化、戦後の食生活の変化に伴って、現在では北海道内で約12,000haが作付されている。

名称の由来

タマネギの英名「onion」の語源は、ラテン語の「union」(集合体)で、葉の部分が重なり合う形状に由来するとされる。

特徴

タマネギの食用とされる部分は根ではなく、葉の根元が養分を蓄えて大きくなった鱗茎(りんけい)といわれるものである。東欧系の辛み品種と南欧系の甘み品種に大別される。辛み品種は硫化アリルを多く含み、甘み品種は硫化アリルの含有量はわずかである。日本で栽培されているのは、ほとんどが辛み品種。球の色には銅黄色、紅紫色、白色の三種類があり、形状は扁球形、球形、紡錘形などに分けられる。国内で最も多く出回っているのは辛み品種の黄タマネギ。紅紫色の湘南レッドに代表される赤タマネギは甘み品種で、ペコロス(小タマネギ)や葉タマネギなどは、辛み品種に分類される。

食材情報

和洋中さまざまな料理に使えるオールマイティな野菜。生のタマネギは辛みと香りがあり、加熱すると甘みと旨みが出る。スライスしてサラダにするほか、西洋料理のベースに利用されることが多く、「西洋のカツオブシ」ともいわれる。カレーやシチューなどの煮込み料理、ハンバーグやコロッケの具材、炒め物、煮物、揚げ物など、あらゆる料理に利用できる。全国で栽培されており、輸入も多いことから、一年中出回っている。タマネギを包丁で切ると涙が出ることがあるが、これはタマネギに含まれる硫黄化合物・硫化アリルが目や鼻を刺激するため。切る前にタマネギをよく冷やしたり、包丁やタマネギの切り口を水で濡らしておくことによって、硫化アリルの発散を抑えることができる。生食の場合は、切ってから水に放すと辛みが和らぐ。国内で生産されるタマネギのほとんどがイエローダンバースの改良品種の黄タマネギだが、最近では生食用に赤タマネギや白タマネギも人気。黄タマネギは日持ちをよくするために、収穫後1ヶ月ほど風干ししてから出荷される。初夏に出回る新タマネギは、多くは白タマネギの一種で、水分が多く乾燥処理に向かないため、収穫後すぐに出荷される。

品種

・黄タマネギ
国内で最も多く出回っている黄色種の辛たまねぎ。イエローダンバース系の札幌黄や泉州黄からの改良種が多く栽培されている。

・サラダオニオン
辛み品種の早生種。扁球形で、水分が多く貯蔵性は低い。辛みが少なく柔らかいため、生食に適している。

・白タマネギ
早春から春にかけて出回る早生種。水分が多く甘みが強いが、貯蔵性は低い。代表種は愛知白。

・赤タマネギ
紫タマネギ、レッドオニオンとも呼ばれる。表皮は鮮やかな紅紫色で、輪切りにすると赤い輪が出る。甘み品種で生食に向く。彩りを生かしてサラダや付け合わせなどに最適で、酢のものや和えものにもよく用いられる。赤い色は抗酸化物質のアントシアニンで、ドレシッングや甘酢などの酸味を加えると色がさえる。代表種は湘南レッドやアーリーレッド。

・葉タマネギ
品種名ではなく、葉付きのまま若採りしたタマネギの総称。

・オニオンヌーボー
静岡県浜松市篠原町が当地の在来種を「世界で一番早く収穫されるタマネギ」としてブランド化した葉タマネギの一種。通常は3月から5月にかけて倒伏が行われるところ、本種は1月に収穫される。太い首が特徴で、水分が多く、甘い玉ねぎで、緑色の茎の部分まで美味しく食べられる。生食に向くが、加熱するとさらに甘みが増す。

・ペコロス
黄タマネギを密集栽培して小球に育てたもの。直径3〜4cmで、小タマネギ、プティオニオンともいわれる。辛みは少なく、煮くずれしにいのでシチューなどの煮込み料理に利用される。

・パールオニオン
小タマネギの一種。大きさは収穫時期によって、1〜2cm程度のものからピンポン玉大のものまである。つけあわせ、スープやシチューの具材にするほか、ピクルスにも利用される。真珠のような光沢を持った美しさから、カクテルのギブソンに使われることでも有名。

・ルビーオニオン
鮮やかな赤色の表皮の小タマネギ。スライスしてサラダの彩りにするほか、ピクルスにしても美しい。

主産地

国内での収穫量はダイコン、キャベツに次いで多い。主な産地は北海道で、全国の半分以上を生産する。次いで佐賀県、兵庫県、愛知県と続き、一道三県で全国の生産量の8割を占める。

品種や収穫時期によって旬が異なり、春に種を蒔き秋以降に収穫するものと、秋に種を蒔き翌年初夏に収穫するものに大別される。春蒔きのものは9割が北海道産で、9月から翌4月にかけて出荷される。佐賀県では主に4月〜6月初旬頃に収穫され、出荷は5月〜9月頃までとなる。秋蒔きのものの内、新タマネギと呼ばれる早採りのものは3月〜4月頃に出荷される。

2012年の全国生産量ランキングは以下の通り。

北海道    665,000トン
佐賀県    122,800トン
兵庫県    87,500トン
愛知県    30,100トン
長崎県    25,700トン
静岡県    11,900トン
香川県    11,300トン
栃木県    11,100トン
群馬県    10,300トン
熊本県    9,580トン

栄養

炭水化物が多く、野菜にしてはエネルギーが高いが、ビタミンやミネラルなどの微量栄養素は総じて少ない。多種の硫化アリル類が含まれ、生のタマネギを切った時の臭いや涙の原因となる。硫化アリルは、血液を固まりにくくして血栓を予防する働きがある。また悪玉コレステロールを減らし、善玉コレステロールを増やす働きがあるとされる。そのため、動脈硬化の進行を遅らせ、血管障害を予防するとされる。硫化アリルのひとつであるアリシンは、ビタミンB1の吸収率を高めることから、スタミナ増強に効果があるとされる。そのほか、カルシウム、リン、少量のビタミンA、ビタミンB2、ビタミンCを含む。外皮に多く含まれているケルセチンというポリフェノール成分には抗酸化作用があり、抗ガンや老化予防に効果があるとされる。

選び方

球全体が固くずっしりと重いもの、皮が乾いていてツヤのあるものを選ぶ。押してみて柔らかいものは、傷や腐敗のおそれがある。