マルスダレガイ目マルスダレガイ科
浅利、浅蜊、蛤仔、Kareius bicoloratus
生息域:日本各地
旬時期:3月~4月、9月
調理法:酒蒸し、パスタ、炊き込みご飯、スープ

アサリ

基本情報

古代から日本で食用とされてきたアサリ。貝塚からはアサリの貝殻が多く出土されている。全国の遠浅の海でとれ、春の潮干狩りは手軽なレジャーとしても広く親しまれるなど、日本人にとって古くからなじみが深い貝である。殻の模様は生息する場所で様々に異なり、ひとつとして同じ模様をしたものはないといわれるほど多様である。4~6月の産卵期前が旬。貝類の主な旨み成分であるコハク酸をホタテ貝に次いで多く含み、出汁いらずで調理しやすく、酒蒸し、味噌汁、スパゲティボンゴレ、深川飯、寿司ネタ、佃煮など様々な料理で親しまれている。

名前の由来

海辺に行くと手軽に漁って獲ることができたことから、「漁る(あさる)」から「あさり」に転訛した説。浅い場所にいることから「浅貝」の意とする説がある。

特徴

4センチ前後になる二枚貝。貝殻の模様は横縞や幾何学模様、黒無地、茶色無地など多様で、産地によって異なる。同じ模様をした個体はいないといわれるほどである。ただし北海道の個体は、貴褐色で貝殻に目立った模様がない。汽水状態を好み、浅瀬で塩分の薄い砂あるいは砂泥底に生息する。砂や泥にもぐり、水管を伸ばして海中のプランクトンなどを捕食する。関東以南での産卵は春と秋の2回。北海道では夏に1回。雄が水中に精子を放出することによって雌が受精する。受精卵は10時間ほどで孵化し、浮遊幼生となり、プランクトン期を経て稚貝に変態する。成貝の大きさは棲む場所により大きく違いが出る。日本、朝鮮半島、台湾、フィリピンまで広く分布する。地中海、フランス、ハワイ諸島、北米に移入されている。

食材情報

東京・深川(今の門前仲町・清住白河周辺)を歩くと、深川飯を名物として看板を出す店が多い。深川飯(深川丼)は、アサリを煮た汁をご飯にかけたもの、あるいは炊きこんだものである。アサリに限らず、貝の産地ではもともとポピュラーな食べ方であり、江戸時代に安価な貝の剥き身を使った汁かけ飯が食べられていた。江戸時代、漁師の町であった江東区深川では、アサリやカキがよく獲れ(当時は埋め立てられておらず、深川近辺はまだ海だった)、漁師が仕事の合間にアサリなどの貝を野菜と味噌で煮て、ご飯にぶっかけて食べていた。これが後に、深川飯と呼ばれるようになった。明治時代に入ってからアサリの炊き込みご飯も食べられるようになり、今ではアサリのぶっかけ飯と炊き込みご飯の両方を「深川飯(深川丼)」と呼ぶようになっている。昭和初期に五大銘飯にも選ばれた。深川飯のほかには、埼玉の忠七めし、大阪のかやくめし、岐阜のさよりめし、島根のうずめめしである。

アサリは佃煮も人気だが、佃煮の由来は、江戸時代に徳川家康が摂津国の漁師を現在の中央区佃島に住まわせ、佃島の漁民がアサリなどの貝類や小魚を醤油で煮詰めて保存食にしていたことである。保存性の高さと値段の安さから江戸庶民に普及し、さらに参勤交代の武士が江戸の土産として郷里に持ち帰ったことから、全国に広まった。

旨みのもとであるコハク酸を多量に含有し、様々な料理に調理可能である。なお、本場クラムチャウダーの具としても知られるホンビノスは、マルスダレガイ科でアサリの仲間である。

国内では愛知県の漁獲量が圧倒的に多く、全国シェアの約7割を占める(2013年統計で全国2万3千トンの漁獲量の内、愛知県は約1万6千トン。次いで静岡県・三重県だった)。1980年代前半まで、国内のアサリ生産量は毎年14万トン前後で推移していたが、沿岸域の開発や乱獲などによって生産量は減少の一途を辿り、近年は年間約3万トンにとどまっている。国内の生産低下に伴い、中国・韓国などからの輸入品が増えている。

国内では漁場回復のため、人工干潟の造成や、客土・覆砂事業なども行われている。アサリなどの二枚貝は縣濁物食者といって、水中のプランクトンを捕食することから、水質浄化機能が高いことが知られ、そのため水質浄化と漁獲回復の双方を狙った干潟再生事業が各地で行われている。

良品選定としては、貝殻が閉じているもの。貝殻が大きいものを選ぶ。旨みの元であるグリコーゲンやコハク酸が豊富で、産卵期を迎える春には、特にこれらの成分が増え、旨みがぐんと増す。たんぱく質量は魚に比べて少ないが、たんぱく質構成物質のひとつであるタウリンを多く含む。タウリンが肝機能を助けるとされることから、二日酔いにアサリの味噌汁が良いとされる。ビタミン12などのビタミン類、マグネシウムや鉄などのミネラルも多く、旨みの元であるグリコーゲンやコハク酸が豊富である。

・アサリの酒蒸し
砂抜きした殻つきアサリを鍋に入れ、酒を入れ、蓋をして強火にかける。アサリの口が開いたら盛りつけ青みを散らす。

市場での評価

季節を通して流通している。生鮮品・冷凍品で殻つき・剥き身のものがある。殻の大きなものが高価。キロ当たり600円~1000円前後で取引されることが多い。近年は国産物よりも輸入物の方が多い。

漁獲法

ジョレンや熊手でかき取る。底引き漁などでも漁獲される。

潮干狩りがポピュラーであり、春の行楽として親しまれている(秋もアサリの旬だが、潮の満引きが大きいことから、春に行われることが多い)。