ウナギ目ハモ科
鱧、Daggertooth pike-conger
生息域:本州中部以南
旬時期:6月~8月
調理法:ハモちり、ハモすき

ハモ

基本情報

京都の夏はハモ料理と共に始まる。京都の夏といえば祇園際であり、祇園際といえばハモ料理。ハモは梅雨の雨を飲んで旨くなるといわれ、梅雨明けの7月に入ると脂が乗り始め、旬の最盛期を迎える。湯引きしたハモを氷水で締めたハモ落としは夏の京都料理の代表格。紀伊水道や瀬戸内海などが産地として有名。特に関西で好まれる。

名前の由来

鋭い歯を持ち、気が荒く近寄る魚に噛みつくことから「はむ(食む)」、「はむ(咬む)」「歯魚(はも)」に由来する。トウヘイ・トウヘン(島根県)、アオハモ(徳島県、雄のハモ)、ウド・ウニハモ(福井県)、ウミウナギ(北九州)、ギイギイ・ゴンギリ(長崎県)、ジャハム(石川県)、タツバモ(京都府)、ハム(広島県)、スズ(徳島県)、バッタモ(丹後)などの地方名を持つ。

特徴

体長は80cmほどだが、最大で2.2mほどになることもある。雄は成長しても70cm前後で、雌の方が大きくなる。雌は赤銅色なのに対して、雄は黄色がかった青色である。細長い円筒形で、体色は茶褐色で腹部は白く、体表には鱗がない。体側には側線がよく発達し、肛門は体の中央付近にある。体の後方の上下に細かいひれがあり、黒く縁取られているのが特徴。口は目の後ろまで裂け、両顎には犬歯のような鋭い歯が並び、内側にも細かい歯が並ぶ。気が荒く、産卵期には近寄る魚に噛みつき、また海老やカニ、イカやタコを捕食する。漁獲した際には大きな口と鋭い歯で咬みついてくるので注意が必要である。スズハモと形が似ているが、側線孔数の数が異なり、ハモは40〜47であるのに対して、スズハモは33〜39である。

西太平洋とインド洋の熱帯・温帯域に広く分布し、日本でも本州中部以南で見られる。水深100m以浅の砂泥地に生息し、昼は砂や岩の隙間に潜って動かず、夜になると海底近くに上昇して獲物を探す夜行性。肉食性で小魚、甲殻類、頭足類などを捕食する。4月から9月にかけて浮遊卵を産卵するが、ウナギのような大規模な回遊はせず、沿岸域に留まったまま繁殖行動を行う。ほかのウナギ目の魚と同様、孵化するとレプトケファルス期を経て稚魚に変態する。

食材情報

「東のアナゴ、西のハモ」といわれ、関西地方、特に京都、大阪で人気の高い魚である。京都でハモを食べる文化が発達した理由は、生命力の非常に強い魚で、輸送技術が発達していなかった時代でも、大阪湾や明石海峡で採れたハモを内陸の京都まで生きたまま輸送できたからであるといわれる。そのため盛んに食べられるようになり、独自の調理法が発達した。7月の京都・祇園際ではハモ料理を食べる習慣があり、「祭鱧(まつりはも)」と呼ばれ、祇園祭は「鱧(はも)祭」ともいう。京都の中央卸売市場では、祇園祭のある7月16日、17日に年間で最もハモの価格が高騰し、キロ4000円をつけたこともある。小骨の多い魚で、京大阪では「骨切り」をして料理する。一寸を二十四に切るほど細かく包丁を入れるもので、熟練の技術が必要である。このことから、長く関西ならではの味覚とされていたが、近年では関東でも食べられるようになってきた。「ハモは梅雨の水を飲んで旨くなる」といわれる通り、梅雨明けから7月が旬の最盛期。8月に入ると抱卵魚が目立つようになる。漁の最盛期は9月頃にピークを迎え、8月から9月にかけては価格が一気に下がるが、産卵後のハモは身が痩せている。晩秋にかかるハモがあるが、これは産卵後に旺盛な食欲で餌を食べ、脂が乗って「金ハモ」「落ちハモ」と呼ばれて珍重される。

骨切りしたハモを熱湯に通すと、身が白い花のように開く。これを湯引きハモ、あるいは牡丹ハモといい、梅肉を添えたものは、夏の京都ならではの味覚である。きゅうりと合わせた「はもきゅう」、野菜と一緒に出汁で煮た「ハモすき」のほかに、土瓶蒸しやハモ寿司、天ぷらや蒲焼など様々な料理に用いられる。ことにハモと松茸を使った土瓶蒸しは出会いのもので、夏の終わりにだけ味わうことのできる味覚である。すり身を焼き上げた「焼きとうし」、すり身を蒸してから焼いた「ハモ板」などにも加工される。大阪では、半夏生(はんげしょう)の7月2日にタコとハモを食べる習慣がある。

ハモは雌がおいしく、雄はまずい。大きなものは雌なのでうまい。60cm以下の青みがかったハモは雄なので選ばない。体表が輝いて、ぬめりに透明感のあるもの、活けは硬直していないものを、活け締めされて入荷してきたものは死後硬直前か死後硬直状態にあるものを選ぶ。

ビタミンAを豊富に含む。また骨切りして骨ごと食べるためにカルシウムも豊富である。ハモの皮にはコンドロイチンという軟骨や関節の結合組織を丈夫にする成分が含まれている。

市場での評価

雄は安く、雌が高い。かつては関西で高く、関東で安かったが、現在では関東でも高値で取引される。7月に入荷が多く値段も高い。釣りもので活け締めしたものは高い。