スズキ目アジ科シマアジ属
縞鯵、島鰺、White trevally、Striped jack、Guely jack 
生息域:本州以南
旬時期:7月~8月
調理法:刺身、塩焼き、煮つけ

シマアジ

基本情報

アジ類の中でも味が良く、身質が締まり、しっとりと程良い脂の乗りと旨みを持つシマアジ。天然ものは漁獲が激減し、一時は「幻の魚」とまでいわれたが、近年では養殖が盛んに行われ、スーパーなどにも並ぶようになった。天然ものの中でも2kg前後のものは特に最高級品とされ、一本1~2万円の値がつくことがある。

名前の由来

体に黄金色の縦縞があることから「縞鯵」。伊豆諸島や太平洋沿岸の島での漁獲が多いことから「島鯵」とする説もある。特大のものは、東京ではオオカミ、和歌山ではソイと呼ぶ。地方名はほかにアブラカマジ、ウタゴ、オーガシ、カイワリ、カツオアジ、カツン、カマジ、ギュウギュウ、クチグロカマヂ、コセ、コセアジ、シマイオ、シマイサギ、シマイッサキ、シラシヨウジ、ソジ、ソウジ、ヒラアジ、メアカサゴなど。

特徴

全長1m。体側の中央を黄色い縦縞が走ることが特徴だが、この縦帯は老成すると不明瞭になる。鰓蓋の上部に大きな黒い斑紋がある。体色は背側が青緑色、腹側が銀白色をしている。体は長楕円形で体高が高く、側扁する。稜鱗は体後半部の直走部の後半4分の3を占める。尾に近い部分に楯鱗がある。全世界の亜熱帯・温帯海域に広く分布し、春から夏にかけて北上し、秋から冬にかけて南下する南北回遊を行う。沿岸の水深200m付近までの表層から中層に生息するが、特に潮通しの良い沿岸の岩礁域や島嶼部に多い。群れで遊泳し、小魚やイカ、エビなどを食べる。吻が長く前に突き出て、唇が筒のように前に突き出すことができ、海底の砂を口で掘り砂中に潜む小動物を吸い込んで食べる。産卵期は秋から冬で、日本近海では12月~3月に産卵する。卵は分離浮遊卵である。孵化直後は全長2~3mmで、50日後には10倍の大きさに成長する。稚魚は流れ藻などにつき、1年で18cm、2年で30cm、3年で40cm、4年で45cmに達する。ギュウギュウと鳴く。

食材情報

アジ類の中で最高級の食材として珍重されるシマアジだが、漁獲量は激減しており、天然ものはあまり獲れなくなってしまっている。現在では、築地市場に入荷してくるものの99%以上が養殖あるいは半養殖のものである。天然のシマアジは、全体的に青緑色で、ひれは見事な黄色である。淡いピンクまたは乳白色の身は、最上のものでは琥珀色になる。身質はよく締まり、脂の乗りが程良く、しっとりとした旨みと甘みがある。天然ものは関東近辺、特に伊豆半島・外房にかけてが最高の漁場であるとされる。旬は夏から秋。2kg前後のものが最高とされる。小型のものは年間を通して美味で、冬も旨い。

一時は「幻の魚」とまでいわれたシマアジだが、昭和40年代から養殖が盛んになり、現在ではスーパーなどにも並ぶようになった。養殖ものは天然ものより脂が強い。

値段が高いこともあり、刺身で食べられることが多い。刺身にした後のアラを潮汁にしても美味。ほかに塩焼き、煮つけ、ムニエル、フライなどになる。近類種のカイワリは味がシマアジに似て高級魚とされる。

ビタミンDを豊富に含有するほか、ビタミンB1、ビタミンB6などのビタミンB群、DHPやIPAなどの不飽和脂肪酸も多く含む。

市場での評価

現在、市場に出回るシマアジのほとんどが養殖ものである。天然物は少なく、特に2kg前後のものは非常に高価に取引され、1尾で1~2万円がつくこともある。養殖ものは価格が安定しており、キロあたり2000円〜3000円程度。ニュージーランド、オーストラリアなどからのチルド輸入もある。

漁獲法

釣りや定置網、刺し網などの沿岸漁業で漁獲される。磯釣りの好対象魚としても人気が高い。戦後始まったシマアジの養殖は、昭和40年代から盛んに行われるようになり、伊豆や和歌山、愛媛、大分、熊本、長崎などで行われている。脂の乗りの十分でない成魚を捕獲し、餌を与え太らせて出荷する畜養ものは、養殖ものより高値がつく。特に大分・豊後水道の畜養は、餌の改良が進み、市場での評価が高い。また長崎や愛媛、高知、大分などでは、種苗を放流して天然水域である餌付けしてから漁獲する「飼いつけ漁業」の研究が行われ、成果を上げつつある。