スズキ目アジ科
真鯵、Horse-mackerel
生息域:北海道南部から東シナ海
旬時期:夏
調理法:刺身、たたき、塩焼き、干物、フライ

アジ

基本情報

味にくせのない青背魚で、万人に好まれる。通年食されるが、特に脂が乗るのは夏。関アジをはじめ、岬(はな)アジやどんちっちあじなど、各地でブランド化されている。くせのない淡泊な白身は、アジという名前が味の良さに由来するともいわれるほど美味。刺身やたたき、寿司など地方によって様々な料理にされる。フライや塩焼き、天ぷらなどにしてもおいしい。小さなものは南蛮漬けにして骨ごと食べられる。都市部のスーパーなどでも必ず見かける魚である。多くは網で漁獲されるが、「黄アジ」「黄金アジ」などと呼ばれる根つきのマアジは一本釣りで漁獲され、高値で取引される。資源変動の大きい魚種で、1980年代には漁獲量が50万トン以上から5万トン前後に落ち込み、「大衆魚から高級魚になった」といわれたが、90年代には再び漁獲量が増える。現在は約15万トン前後となっている。

名前の由来

味の良さから「アジ」となったとする説(新井白石は語源時点『東雅』の中で「アジは味なり、その美なるものをいう」と書いている)、旧暦の3月(太陽暦5月)に脂が乗り始めることから「参(三)」の字を当てたとする説、「(あまりに旨いので)参った」に由来するとする説などがある。別名にアオコ、アカアジ、アジ、アジジャコ、アヅ、アルアジ、オニアジ、オハナアジ、カキノタネ、ガツン、キンベアジ、グイ、クロアジ、シモフリアジ、ジャコ、トッカアジ、トッカワ、トツパ、トッパアジ、ナガブクラ、ノドグロ、ノドクロ、マルワリ、メダマ。15〜20cmをゼンゴ、20〜25cmを小アジ、25〜30cmを中アジ、それ以上の大型をオオアジ(大鰺)という。相模湾では、初冬の味の落ちた大アジを霜降りアジという。

特徴

全長40cm前後になる。側線上に稜鱗(ぜいご)という硬い刺のある鱗が発達している。背びれと尻びれ後方に小離鱗はない。推進2m程度の内湾から、水深150mの深海まで広く生息している。産卵期は1月から11月。海水魚。沿岸の中層から低層を群れで移動する。回遊魚だが、内湾に根つきのものを「黄アジ」と呼び、特に味が良いことから高く取引される。

食材情報

マアジには、内湾に生息し地付きで移動しない「黄アジ(ヒラアジ)型」と、内湾から沖合を回遊する「黒アジ(ノドクロアジ)型」がいる。生物学的には同種だが、外見や食味、価格も異なる(黄アジが高価に取引される)。黄アジは背部とひれが黄色味を帯び、小ぶりだが脂が乗って甘み、旨みが強い。漁獲量が少ないため、一本釣りで漁獲され、高級魚となることが多い。「根つきアジ」「根アジ」「瀬つきアジ」「金アジ」「黄金アジ」とも呼ばれる。兵庫県淡路島産「松栄丸の黄アジ」、山口県産「萩の瀬つきアジ」、千葉県金谷漁協の「黄金アジ」、千葉県南房総富浦産の「黄アジ」などが有名。黒アジは、体表は全体的に黒っぽく、身体が細長い。脂肪含有量は少ない。巻き網などで漁獲されるため、身が傷みやすい。佐賀関の関アジ、唐津や玄界灘のアジは黒アジである。東京湾や相模湾でも多く漁獲される。

1月~2月頃に産卵したアジは、4月~5月に身質が充実し脂が乗って美味になるため、4~10月が特に美味とされる。同じ時期に漁獲量も増える。鰺のたたきは漁師が船上で食べる沖膾(おきなます)が起源。1965年頃。新宿にある料亭の板前が伊豆で食べたものをアレンジして出したことから、全国的に生食が普及したといわれる。

静岡県沼津市はアジの開きで日本一を誇っている。四国地方を中心にアジの姿ずしがつくられている。

全体に丸いものがいい。腹を触って硬いもの。体表の輝いているもの。鮮紅色のもの。眼の色が白濁している場合があるが、氷水に入れて保存されたものは白くなるので、鮮度を見分けるポイントにはならない。外見だけで脂の乗り具合を確かめることは難しく「開いてみなければわからない」と築地の仲買人がいうほどである。市場内で半身に開いて見せる店もある。産卵期には脂が乗り、特においしくなる。場所によって産卵期が移り変わるため、ほぼ一年中日本のどこかで旬を迎えている。

生活習慣病の予防に効果のある青背魚といえば、アジ、イワシ、サバがその代表に挙げられる。マアジのたんぱく質含有量は20%以上であり、魚の中でのトップクラス。脂肪含有量が少なく、アジの旨みはたんぱく質の旨みである。グリシン酸やグルタミン酸、イノシン酸を多く含み、濃厚な旨みを持ち、干物にしても美味。ビタミンB1、カルシウムが豊富で、タウリンも含まれる。成分としては青背魚より白身魚に近い。養殖ものもかなり出回っているが、味は天然ものよりもかなり落ちる。

仲間

・メアジ
全長35cm程度。体型はマアジに似るが、稜鱗が体の後半にしか見られない。名前の通り目が大きい。塩焼きやフライに適している。

・マルアジ
全長40cm程度。稜鱗は体の後半に見られる。尾びれが黄色みを帯びている。マアジとして流通していることもある。マアジより安く、冬が旬。マアジに比べて血合いが多く、フライなどにすると美味しい。

・ムロアジ
全長40cm程度。体表に黄色い縦帯が走る。稜鱗は体の後半の直走部4分の3を占めることが特徴。干物の原料にされることが多い。伊豆名物のくさやはムロアジやクサヤムロアジをくさや汁につけ、天日で干したものである。

・シマアジ
全長1m程度。体側中央に黄色の縦帯があり、鰓蓋丈夫に大きな黒斑を持つ。アジ類の中で最も味が良いとされ、刺身や寿司でも人気のある高級魚である。天然物は希少性が高く、築地市場に入荷するシマアジの99%以上が養殖もの、あるいは半畜養ものである。たまたま漁師が釣り上げたり、定置網に入った天然シマアジは活けの状態で市場に送られ、極めて高値で取引される。

市場での評価

釣りものは高級魚として取引される。

ブランド

・関アジ(大分県佐賀関)
豊予海峡で漁獲され、大分県佐賀関で水揚げされるアジ。関サバと並んで水産品の高級ブランドとして有名。豊予海峡は非常に海流が速く、餌となるプランクトン等の餌が豊富にあるため、本来は回遊魚であるアジやサバが根つきで生息している。肥育が良く身が締まっており、頭が小さく尾が発達した外観と金色がかった体色、腹部に入る線が特徴。一本釣りで漁獲される。大分県漁業協同組合佐賀関支店では、関アジ・関サバの商標を出願し、水産品として全国初となる商標登録が認められた。関アジ・関サバには「関の一本釣り 関あじ関さば」と書かれたタグシールをつけて出荷される。

・岬(はな)アジ(愛媛県西宇和郡伊方町)
関サバと同じ豊予海峡で漁獲され、愛媛県西宇和郡伊方町の岬漁協で水揚げされたアジ。漁獲後、生簀で最低1日魚を休ませ、ストレスを抜いてから活け締めし、氷水で身を引き締めて出荷される。

・灘アジ(北浦)(宮崎県延岡市)
水揚げしたものを一定期間いけすに移し、腹に残っている餌を消化させてから活け締めにして出荷される。

・技アジ(大分県・豊後水道)
豊後水道で漁獲されたアジや鯛などの魚を「技」ブランドで出荷している。キロあたり1600円前後と高値で取引されている。

・どんちっちあじ(島根県浜田市)
島根県浜田漁港に揚がったものから、脂質10パーセント以上のものを計測して出荷している。脂が乗って美味。その脂に甘みを感じる。巻き網で漁獲されるためブランドアジとしては価格が安い。「従来から島根県西部沖で獲れるマアジは脂ののりが良く、旬の時期はトロにも匹敵すると言われてまいりました。近年、水産技術センターにおいて浜田のマアジの旬を解明すべく脂質含有量の経年変化の調査が行われました。その結果、浜田港に水揚されるマアジは他産地のものより脂肪含有量が高く、旬には10%を超え、時には15%を超えることが明らかになりました。(一般のアジは3.5%)。そこで私たちは厳しいブランド規格を設定して「どんちっちアジ」の品質を保持し、多くの方々にお届けしております。よく脂がのって美味しいといわれるのは、脂質含有量が多いためです。ではなぜ、島根県浜田漁港のマアジは脂質含有量が非常に高いのでしょうか。それは、島根県西部沖には"カラヌス"と呼ばれる体の半分以上が脂で構成されているプランクトンが生息していて、これが島根県西部沖のマアジの栄養源となり、豊富な脂質含有量に関連しているのではないかと考えられています。特に4月から9月の旬に脂質含有量が10%以上にもなっているからです。」島根県浜田漁港にあがった「どんちっちあじ」。脂質16パーセント以上を計測して出荷している。これくらい脂がのっていると口のなかで溶けるよう。その脂に甘みを感じる。「関あじ」が釣りものなのに対して、巻き網でとったものでブランドアジにしては値段が安く、しかも非常にうまい。

・松栄丸のアジ(兵庫県南淡路島)
淡路島の産地荷受業者「松栄丸水産」が取り扱う昭島周辺で漁獲される黄アジ。いわゆる商標登録されたブランドアジではないが、「松栄丸のアジ」と築地市場で呼ばれ、評価が高い。

・その他
奥地アジ(愛媛県三瓶町)、ゴンアジ(長崎県三重町)、旬アジ(長崎県松浦市)、瀬つきアジ(山口県萩市)などのブランドアジがある。

漁獲法

定置網、巻き網、地引網、刺し網で漁獲される。

東京湾、相模湾などでは年間を通して船釣りが行われ、初心者にも人気である。イワシミンチのコマセ、天秤仕掛けの2本バリで釣る。特に神奈川県横須賀市走水の大アジ釣りは有名。港内や防波堤では胴突きのサビキを用いたファミリーフィッシングも盛んに行われている。釣ったアジを餌にブリ類等の大型肉食魚を狙うこともある。