ハマグリ

マルスダレガイ科ハマグリ属
蛤、文蛤、蚌、Clam
生息域:瀬戸内海、有明海
旬時期:2月~3月
調理法:焼きハマグリ、煮ハマグリ、酒蒸し、味噌汁

ハマグリ

基本情報

縄文時代の貝塚からも多数出土され、平安時代以降は貝殻を使った貝合わせが貴族の遊びとして親しまれるなど、古くから日本人になじみの深いハマグリ。かつては日本の沿岸部で潮干狩りでも獲れたが、戦後の高度成長期で沿岸のコンクリート化や水質汚染が進んだために姿を消し、いまや絶滅危惧種となった。現在、国内で流通しているハマグリのほとんどは近縁種であるチョウセンハマグリやシナハマグリである。コハク酸に富み、大型のものは焼いて旨く、煮ハマグリは江戸前寿司の寿司種に欠かせない。潮汁、天ぷらや酒蒸し、炊き込みご飯、佃煮など様々な料理に利用されてきた。

名前の由来

浜辺に生息しており、形が栗の実に似ていることから「浜栗」の名前がついたとされる。ほかに浜にある礫(石)の意で「浜礫(はまぐり)」となったとする説がある。市場ではほかのハマグリ属の貝と区別して「本ハマ」とも呼ばれる。またハマグリのことを「グリハマ」「グレハマ」とも称し、ハマグリの貝殻をひっくり返すと合わなくなることから、物事が合わなくなることを指した。不良になることを指す「ぐれる」という言葉はこれに由来する。

特徴

殻長10cm程度、殻高6cm程度になる。殻の色は黄褐色の地に褐色帯が八の字型に入っているものが多いが、単色に近いものやさざ波模様のものなど様々な文様がある。内湾の干潟から水深12mくらいまでの淡水が流入する場所に生息する。以前には東北地方以南の沿岸で潮干狩りなどで獲ることができたが、沿岸のコンクリート化によって砂浜や比嘉多賀消滅したために激減。現在では瀬戸内海と有明海など九州西岸でしか漁獲がない。産卵期は5月から10月。若い貝は環境が変わると粘液を吐き、水流に引かせて移動する習性がある。これを「ハマグリの蜃気楼」と呼んだ。

マルスダレガイ科ハマグリ属の貝は、本種のほかに外洋性のチョウセンハマグリ、外来種のシハマナグリがある。現在、国内で流通しているハマグリのほとんどが中国から輸入されたシナハマグリである。ハマグリとシナハマグリの見分け方は、斑紋に光沢があり、、殻の後端がやや伸びるのがハマグリ、光沢に乏しく地がくすんだ灰色で、殻の両端の伸び具合がほぼ同じものがシナハマグリである。

食材情報

縄文時代の貝塚からもハマグリの貝殻が多数出土しており、「日本書紀」にも登場するなど、日本人に古くから親しまれてきた貝。旨味成分であるコハク酸を豊富に含み、様々な料理に利用される。煮ハマグリは江戸前寿司に欠かすことのできない寿司種であり、潮汁は三月の桃の節句に欠かせない。産地では新鮮なものを刺身にする。大型のものは焼きハマグリにして美味。酒蒸しやクラムチャウダー、天ぷら、炊き込みご飯、佃煮、土瓶蒸しなど、幅広い料理で利用される。

沿岸のコンクリート化によって、現在では瀬戸内海と有明海など九州西岸の一部で漁獲されるのみとなっている。現在、茨城・鹿島灘や千葉・九十九里で漁獲されるものは、チョウセンハマグリというマルスダレガイ科ハマグリ属の近縁種である。

古くから日本各地で郷土料理として愛されてきた。焼きハマグリは三重県桑名の名物で、「その手は桑名の焼きハマグリ」と囃子で歌われた。また伊勢名物のたまり醤油でハマグリを煮込んだ時雨(しぐれ)煮も三重県桑名の名物である。

古くから食べられているハマグリは文化との関わりも深く、ハマグリの貝殻を金箔や蒔絵で装飾し、和歌や物語を描いてとった数を競い合う貝合わせは、平安時代から貴族の遊びとして親しまれた。ハマグリの貝殻360個に源氏物語などの絵物語を描いた貝桶は、近世まで嫁入り道具に使われた。対になっているものでないと殻のかみ合わせが合わないため、夫婦和合の象徴として祝い事に使われてきた。大阪住吉の春先の小さなハマグリを酢に和えたものは洲蛤、酢蛤と呼ばれ、二月初午の日にこれを食べると鬼気除けになるとされた。

ハマグリはたんぱく質を適度に含み、鉄やビタミンB1、ビタミンB2を豊富に含むため、貧血予防に効果的とされる。またカルシウムやマグネシウム、リン、亜鉛なども豊富である。グルタミン酸、グリシン、アラニンなどの旨味成分が豊富で、潮汁やスープにすると濃厚な出汁が出る。

市場での評価

ハマグリの流通は少ないが、京都などから築地に入荷されることがある。値段は高い。チョウセンハマグリは鹿島灘のものが多く「鹿島もの」と呼ばれる。最近、「白ハマグリ」の名前で流通しているものは、近縁種のホンビノスガイ。

漁獲法

じょれん手曳漁やじょれん船曳漁で漁獲される。なおハマグリは環境省レッドデータブックで2012年に絶滅危惧II類に指定された。現在、国内でハマグリとして流通している多くがチョウセンハマグリまたはシナハマグリである。