カキ目イタボガキ科
真牡蠣、Oyster
生息域:日本各地
旬時期:9月~4月
調理法:生ガキ、焼きガキ、蒸しガキ、フライ、鍋、グラタン

マガキ

基本情報

「海のミルク」と称せられるほど栄養価が高く、古くから東西世界中で愛されてきた貝。古代ローマでも食べられていたといわれ、日本での歴史も古く、貝塚からカキの貝殻が出土している。寒い時期が旬で、「Rがつかない月(英語で5月~8月)にはカキを食べるな」といわれる。殻をむいて生食するほか、焼きガキ、蒸しガキ、フライや鍋、リゾットやグラタンなど様々な料理法がある。

名前の由来

「石から『掻き』落とす」、「殻を『欠き』身をとる」「身を『掻き』出して食べる」ことに由来する。漢字は「牡」の字を当てるが、これは古くにはすべて雄だとされていたためである。

特徴

殻長5cm、殻高10cmくらいのものが多いが、大きなものでは殻長20cmを超えるものもある。付着生活をするため、大きさや形は一定しない。塩分の比較的低い環境を好む。岩などに付着するが、本来は河口や干潟などに浮かんで生息し、幼生のカキはほかのカキの殻に付着して成長するため、カキ同士の付着した「カキ礁」と呼ばれる塊ができる。このカキ礁は各地で見られ、水質浄化の役割に近年注目が集まっている。またサロマ湖のように泥深い場所にすむマガキは殻高30cmにもなり、ナガガキと呼ばれる。交代的雌雄同体で、生殖は別個体が雌雄の役割をする。

食材情報

栄養に富み、「海のミルク」と称せられ、古くから世界中で愛されてきた貝。貝を生食しない欧米でも、カキだけは人気で、オイスターバーなどで提供されている。新鮮なものは生ガキにして美味。水で洗い、柑橘類を絞って食べる。焼きガキ、蒸しガキにしても良い。風味が良く、フライや鍋、リゾットやグラタンなど様々な料理法がある。秋の終わり頃から産卵に備えて太り、寒い頃がおいしい。英語で「R」がつく月(9~4月)が旬とされる。

剥いたものでは生食用と加熱用がある。生食用は大腸菌などが少ないとされる海域でとれたものを水揚げ後、一定時間紫外線殺菌した海水で浄化したもので、そのほかの海域で水揚げ後すぐに出荷したものが加熱用。加熱用のものが鮮度が悪いという意味ではない。

国内で市場に流通しているカキ(イタボガキ科の貝)は、マガキ、イワガキ、イタボガキ、スミノエガキの4種。天然ものが多いイワガキに対して、市場に流通しているマガキはほとんどが養殖ものである。

疲労回復に役立つとされるグリコーゲンを豊富に含む。最近ではタウリンの含有量の多ささにも注目が集まっている。鉄やカリウムも多い。

ブランド

・カキえもん(北海道)
海水温の低さを活かして、国内で唯一、年中出荷している北海道・厚岸の「カキえもん」。通常はひとつの貝に、複数のカキ牡蠣の稚貝を付着してて育てるが、ひとつの貝にひとつだけ付着させる「シングルシード」という方法で養殖されている。「紫外線殺菌水槽」設備により衛生面にも配慮している。

・寿牡蠣(北海道)
北海道寿都町漁業協同組合が出荷する。通常のマガキの旬は秋から春だが、本州よりも海水温の低い寿都のマガキの旬は4月下旬から7月上旬。

・サロマ湖産(北海道)
日本最大の汽水湖であるサロマ湖で養殖されるマガキ。1年ガキと2年ガキがあり、1年ガキは小粒だが味が凝縮して美味。

・赤崎の牡蠣(岩手)
三陸大船渡湾の赤崎はカキの名産地として名高い。湾でありながら深い入り江になっているため、波も穏やかで、森の栄養分が溶け込んだ雨水が海に流れ込み、カキを育てる。カキの養殖中には殻にいろいろな生物や海藻が付着するが、赤崎では温湯処理という手法でこれを外す。かつてはドラム缶を利用して、引き上げたカキから1個1個手作業で付着物を取り除いていたが、現在では機械化が進んでいる。

・花見かき(岩手)
2~3年かけて育てるため、1個50g前後と通常の3倍以上の大きさ。2005年に「春のたより花見かき」の名称で商標登録された。

・三陸もまれ牡蠣(宮城)
宮城県の最北端に位置する唐桑半島は、広田湾と気仙沼湾に囲まれた漁場。広大な山から海に流れ込む雨水は植物プランクトンを豊かに含み、カキを育てる。唐桑ではカキ養殖のために、20年以上前から地元の漁師たちが植林運動を続けており、カキが良く育つための漁場づくりに注力している。2~3年かけて育て、また「耳吊り」という1粒あたりの間隔をあけた吊り方をしているため、1粒の身が15cm前後と大粒。

・能登がき(石川)
七尾湾で養殖したカキ。プランクトンが豊富な魚場環境を活かして、1年で出荷がしている。小粒だが肉厚で甘みが多い。

・的矢がき(三重)
1927年に、水産学者の佐藤忠勇が三重県志摩市的矢湾で初めて垂下式養殖法に成功し、これが全国に普及した。プランクトンが豊富な漁場環境を活かして、1年で出荷している。出荷の1ヶ月ほど前になると、垂下しているカキを引き上げ、1粒ずつ籠に入れて再び1ヵ月間養殖するため、身入りの良いカキが育つ。2001年に三重ブランドに認定された。

・浦村がき(三重)
鳥羽・浦村の生浦(おおのうら)湾で育ったカキ。春に種つけをして10月には出荷する1年ガキ。

・渡利かき(三重)
汽水域である白石湖は、大雨が降ると船津川・銚子川から大量の雨水が流れ込み、水深4~5mまで真水となる。真水が海水に戻るまで1~2週間かかるという厳しい環境の中で育つ渡利かきは、グリコーゲンや旨味成分などを蓄えるようになり美味。

・赤穂坂越カキ(兵庫)
名水百選に選ばれた千種川の水が流れ込む播州赤穂坂越湾の生ガキ。

・ひなせかき(岡山)
高梁川、旭川、吉井川、兵庫県千種川という一級河川が交じる日生(ひなせ)で日生(ひなせ)のカキは、日生のカキは殻長10~15センチと大きく、加熱しても身が縮みにくいた 地元の鳴瀬水産では、水揚げしたカキを選別し少量ずつ網カゴに入れ、カゴごと沖のイカダから吊るす(「活かす)」という)。10~20日間「活かした」カキは、寒い海の潮でもまれ美味しさを増していく。

・かき小町(広島)
広島県栽培漁業協会と広島県立水産海洋技術センターが開発した「かき小町」は三倍体カキという種別にあたり「産卵しないカキ」である。産卵しないため夏から秋にかけても身やせすることなく、年間を通じて大ぶりのカキを楽しむことができる。特許のため全国でも三倍体カキを生産できるのは広島県のみである。

・健牡蠣(広島)
瀬戸内海の宮島の対岸に位置する地御前の海域で育つカキ。採苗した幼生が付着した貝殻を干潟に吊るし、海水に浸かる時間が少ないことからプランクトンの摂取ができず飢餓に近い状態となったカキを沖に移すことで、一気に栄養を吸収し、殻は小さめながら、身が殻の中いっぱいに太ったカキとなる。

・安芸の一粒(広島)
天然の親ガキを用いて天然干潟を利用して育てたカキは、天然ものに近く、溢れんばかり身が詰まり、甘く風味のあるカキとなる。「安芸の一粒」の中でも生後数カ月で出荷するカキを「厳蠣(げんき)」というブランド名をつけている。

・恵比寿かき(福岡)
唐泊は、九州福岡の博多湾の西の端に位置する唐泊では、冬漁の主幹魚種であったカタクチイワシの漁獲量が低迷したため、2001年からマガキ養殖に着手。世界でも有数の漁場である玄界灘で育った唐泊のカキは身入りが良く、ぷりっとした食感が魅力。現地のカキ小屋での提供にも力を入れている。

・豊前一粒牡蠣(福岡)
豊前海で養殖され、殻つきのまま販売されることから「一粒かき」の名称がつけられた。植物性プランクトンの豊富な海で育ったカキは成長が早く、約8カ月で出荷される。通常のものと比べて粒が大きいのが特徴。

・からつんカキ(佐賀)
豊富な栄養を含んだ幸多里の浜沖合で育てられた「からつんカキ」。紫外線殺菌処理海水で24時間以上浄化され、安心安全を重視した品質管理がされている。

・九十九島 殻付かき(長崎)
夏冬の水温差が激しい海で育った九十九島のカキは、やや小粒ながら身が引き締まりコクのある濃厚な味わいが特徴。

市場での評価

近年では年間を通じて流通しているが、10月から3月にかけて入荷が非常に多い。国産のほか韓国などからの輸入もある。

漁獲法

市場で流通するマガキのほとんどが養殖ものである。マガキの養殖方法はイカダ垂下式と呼ばれるもので、内湾にイカダを浮かべて穴を空けたところから稚貝をヒモに通して海に吊り下げる。収穫までは短いものでも12カ月程度かかる。養殖が盛んなのは瀬戸内海、三陸。漁業・養殖業生産統計によると2010年にはカキ類の国内収穫量198,800トンのうち、広島県107,300トン、宮城県40,600トン、岡山県19,000トンで広島県が全体の5割を占める。