ツツイカ目ジンドウイカ科
障泥烏賊、Broad squid
生息域:本州以南
旬時期:4月~6月
調理法:刺身、一夜干し、ゆでいか

アオリイカ

基本情報

身が透き通り優美な姿で泳ぐアオリイカは、呈味成分である遊離アミノ酸が国産のイカの中で最高水準であり、「イカの王様」とも呼ばれる。しなやかな柔らかさと歯ごたえ、甘みが特長で、江戸前の寿司や天ぷらの寿司種として欠かせない食材である。活け造りにしても美しいが、半日から1日半熟成させた旨みが真骨頂である。漁獲量が少ないこともあり、価格は高価で、国産のアオリイカは多くが寿司屋や料理屋に買われていく。

名前の由来

障泥(あおり)と呼ばれる馬の胴体に巻く泥よけの馬具に形や色が似ていることに由来する。外見がバショウの葉に似ることからバショウイカ(芭蕉烏賊)、透明感のある色合いからミズイカ(水烏賊)、藻場に産卵することからモイカ(藻烏賊)とも呼ばれる。そのほかの別名にクツイカ、シロイカ、タチイカ、ハビロ、ホヤイカなどがある。

特徴

胴長40~45cm程度、同幅12cm、重さは6kg以上に達する。沿岸域に生息する中では大型のイカ。胴が丸みを帯び、半円形のひれが銅の全長に及ぶ外見はコウイカに似るが、コウイカのような石灰質の甲は持たず、薄く透明な軟甲である。雄は胴の背側に白色の横縞帯が散在するが、雌は横縞模様が不明瞭である。ハワイ以西の西太平洋からインド洋の温帯・熱帯域に広く分布する南方系のイカで、日本では北海道以南、特に太平洋側では鹿島灘以南、日本海側では福井県以南に見られる。産卵期は4月から9月と長く、通常は深場に生息するが、産卵期には沿岸の浅場にやってくる。卵嚢には通常5個の卵が入っており、雌は一度に120~250個の卵嚢を産む。約20日で孵化し、幼体は小魚や甲殻類を捕食して成長する。幼体は沿岸の浅場で体長15~20cmほどまで成長する。夏には体長数cmの幼体が落ち葉のように擬態して波間に漂う様が見られる。冬になると深場に移動する。遺伝的な解析から、日本沿岸にはシロイカ型、アカイカ型、クワイカ型の3種のアオリイカが生息することがわかっている。ただし標準和名アカイカは別種のイカである。

食材情報

イカの刺身では最上のものとされ、「イカの王様」とも呼ばれる。呈味成分である遊離アミノ酸が国産のイカとしては最高水準であり、旨みが強い。特に江戸前の寿司や天ぷらの寿司種として欠かすことのできないアオリイカは、特に関東では、なくてはならないイカである。肉質は柔らかいが弾力に富み、甘みがある。活け造りにすると透明な身が美しく、しなやかな柔らかさと歯ごたえ、さらりとした甘みが魅力だが、活け締め後、半日から1日半熟成させたものがより旨みが出るとされる。寿司や天ぷらの種としては2kg前後のサイズのものが最良とされる。雄のアオリイカの方が甘みが強いことが多い。

産卵のため沿岸にやってくる春から夏にかけて多く漁獲されるが、地方によっては秋に浅場で成長した幼体を漁獲する。茹でたてのゲソは香りが良く甘みがある。山陰や九州ではアオリイカを使った一夜干しやスルメがつくられており、非常に高価だが美味。また徳島県などではアオリイカの沖漬け、沖縄県ではアオリイカを墨汁で煮たイカ汁が浜料理としてつくられている。茹でたアオリイカをイカ墨で和えた「くろみ」は長崎県生月島の浜料理である。ほかのイカと同様、低脂肪・低エネルギーで、旨味成分であるグリシンやアラニン、プロリンなどのアミノ酸が多い。

市場での評価

高値安定しており、特に大型のシロイカ型は高価に取引される。特に、初夏から盛夏にかけて、ほかのイカの旬がはざまを迎えることもあり、非常に高値で取引される。3月頃から九州のものが流通し、三重県尾鷹、静岡県御前崎と続き、4月から5月にかけて、伊豆半島、三浦半島、房州と産地が北上する。神奈川県佐島、葉山、千葉県富津などのものは評価が高い。値が高く需要が高いので、大西洋、東南アジア、アメリカなどから近縁種を輸入している。

漁獲法

定置網や釣りで漁獲される。千葉県以南の太平洋側。国内では山陰以西の日本海側が主要産地である。

船釣りのほか、防波堤でのアオリイカ釣りが盛んに行われている。日本古来の「餌木」という疑似餌を使った釣りが幅広い年齢層に人気を呼んでいるほか、近年では餌木に似せたルアーが市販されており、新しいルアー釣りのターゲットとしても人気を呼んでいる。活きた魚を泳がせアオリイカに捕食させ、ヤエンと呼ばれる釣具を掛けて釣り上げるものもあり「ヤエン釣り」と呼ばれる。