ブリ

スズキ目アジ科ブリ属
鰤、Amberjack
生息域:琉球列島を除く日本各地
旬時期:11月~2月
調理法:刺身、しゃぶしゃぶ、カルパッチョ、照り焼き

ブリ

基本情報

古くから年取り魚として伝統行事に使われ、日本人の生活に深く浸透している魚である。特に関西や北陸地方では、東日本の鮭に匹敵する魚として珍重され、祝い事には欠かせない食材のひとつ。ブリ・カンパチ・ヒラマサを指して「ブリ御三家」と呼ぶ。成長に従って呼び名を変える出世魚の代表格で、東京ではワカシ、イナダ、ワラサ、ブリと呼び名が変化する。

名前の由来

「大言海』によれば、脂が多いことから「あぶら」→「ぶら」→「ぶり」と転訛したとされる。「日本山海名産図絵」には「老魚の意をもって年経りたるを 老りにより『ふり』の魚という」と記述されている。そのほかにも、身がぶりぶりしていることに由来するというもの、雪の「降り」積もる季節に旬を迎えることに由来するなど、諸説がある。「鰤」の漢字は、師走(12月)に脂が乗り旨くなることに由来するといわれる。成長段階での各地での呼び名は以下の通りである。

・関東地方
ワカシ、ワカナ、ワカナゴ(10〜30cm)
イナダ(30〜60cm)
ワラサ(60〜80cm)
ブリ(80cm以上)

・三陸地方
ツバエソ、ツバイソ(6cm前後)
コズクラ(9〜15cm)
フクラギ、フクラゲ(30〜45cm)
アオブリ、ハナジロ、ガンド、ブリ(50cm以上)

・北陸地方
コゾクラ、コズクラ、ツバイソ(35cm以下)
フクラギ(35~60cm)
ガンド、ガンドブリ(60-80cm)
ブリ(80cm以上)

・関西地方
ツバス(10〜15cm)
ハマチ(20〜40cm)
メジロ(50〜70cm)
ブリ(80cm以上)

・和歌山県
ワカナゴ(10〜15cm)
ツバス(20cm前後)
イナダ、イナラ(25〜30cm)
ハマチ(30〜40cm)
メジロ(50〜60cm)
ブリ(60cm)
オオイオ(70〜80cm)
ドタブリ(1m以上)

・高知県
モジャッコ(6cm以下)
モジャコ(10cm前後)
ワカナゴ(12〜20cm)
ハマチ(30〜40cm)
メジロ(40〜50cm)
ブリ(60cm以上)
オオイオ(80cm以上)

・九州北部
ワカナゴ(9〜12cm)
ヤズ(15〜20cm)
ハマチ(30〜40cm)
メジロ(50〜60cm)
ブリ(80cm以上)
オオウオ(1m前後)

特徴

成魚は全長1m、体重8kg程度になる。前後に細長い紡錘形で、背は暗青色、腹は銀色で、境の体側に黄色の縦帯がある。体表に細かい鱗があり、側線鱗の数は210から220枚になる。背びれと尻びれの後ろに小離鰭はない。同属種のヒラマサと外形がよく似ているが、ブリは上顎の後端が角張っていること、ヒラマサほど側扁していないこと、胸びれが腹びれより長いこと、黄色の縦帯が不明瞭なことから区別できる。カンパチとは、目を通る黄色い斜線がないこと、目が吻端と尾の中央を結ぶ線上にあることから区別される。南は東シナ海・北はカムチャツカ半島・東はハワイまでの北西太平洋に分布する。主な生息域は日本海南部と北海道南部-九州の太平洋岸である。産卵場は房総半島、能登半島以南の水温20度前後の温暖な海域。産卵期は東シナ海南部で2~3月、九州近海で4~5月頃である。卵は直径1.2~1.4mmの球形分離浮遊卵で、48時間程度で孵化した後、1年で30cm前後、2年で50cm前後、3年で65〜70cm、4年で75cm前後、5年で80cmを超える。稚魚は甲殻類などを捕食し、成魚になるとイワシやアジなどの魚、イカなどを捕食する。稚魚はほんだわらなどの流れ藻につき、そのことから日本各地で「モジャコ(藻雑魚)」と呼ばれる。この時期の稚魚は、養殖用種苗として大量に捕獲される。水温の上昇とともに北に回遊し、水温が下がってくると南下する。群れをつくり、沖合の水深100m程度の中層~底層を回遊する。春から夏には沿岸域を北上し、初冬から春には沖合を南下する。温暖な南方海域では回遊せずに、「根つき」になるものもいる。

食材情報

産卵期前で脂が乗る冬に旬を迎える。この時期のブリは特に「寒ブリ」と呼ばれる。寒ブリは、カンパチやヒラマサよりも脂肪が多く、独特の風味がある。日本海では、ブリの走りとなる冬の荒れた海を「ブリ起こし」と呼ぶ。出世魚で縁起が良いこともあり、西日本では御節料理に欠かせない食材である。長野県や岡山県、福岡県では雑煮の具としても用いられる。富山県から関西地方では、年末年始に年取り魚としてブリを食べる習慣があり、富山県西部では、娘の嫁ぎ先に歳暮として寒ブリを贈る風習がある。また九州北部では、嫁ぎ先から嫁の実家にブリを贈る習慣が伝わる。年取り魚は、糸魚川静岡構造線を分岐点として東西で分かれるとされ、西はブリ、東は鮭となる。石川県の加賀藩では、初代・前田利家の代から年取り魚として歳暮にブリを送る習わしがあった。冨山湾(越中富山)で水揚げされたブリは、岐阜県・飛騨高山を経て、野麦峠を超え、信州松本などの長野県内陸部に正月の魚として運ばれた。この道を「ブリ街道」と呼ぶ。松本地方では今もブリを食べて年末年始を祝う習慣があるが、それはブリ街道によって伝えられたブリに由来する。飛騨では越中からくるブリを「越中ブリ」、信州では飛騨から送られてくるブリを「飛騨ブリ」と呼んだ。飛騨に送られたブリは、太陰暦12月19日(太陽暦では1月下旬から2月初旬)に市を立てて売られた。

富山県や石川県では、かぶら寿司の食材として使用されることがある。高知県では、刺身として食べる際に酢味噌をつけて食べる。加工品としては、イナダ(石川県。ブリを開いてカラカラに干したもの。酒などに浸して食べる)、かぶらずし(富山県。塩漬けのブリとかぶらを米麹で漬け込んだ料理)、塩ぶり(富山県。寒ブリを干して藁で包み、荒縄で巻き上げたもの)などがある。

「漁業・養殖業生産統計年報」(平成12年/農林水産省統計情報部)によると、天然もののブリの漁獲量は7万7461トン、養殖もの13万6834トン。養殖ものが全体の64%を占めている。春に流れ藻についた稚魚(モジャコ)を捕獲して養殖する。肥育期間は通常、2年程度である。世界で初めて養殖に成功したのは日本の引田(香川県東かがわ市)で、築堤方式と呼ばれる天然の入り江や小湾を堤防で仕切って養殖が行われた。その後、支柱式網囲い方式が開発され、小割式網生簀方式に至った。養殖ものの主な生産地は、鹿児島県、愛媛県、長崎県、大分県などで、特に鹿児島県は6万トン近くと、全国生産量の3分の1以上を占める。以前には、養殖の餌には小魚が用いられ、その残りが海底に沈殿しヘドロを形成し、また湾内で養殖が行われるため赤潮の影響を受けやすかった。しかし現在では、養殖場所の外海に移動させることで、養殖の環境は大きく変わり、味も大きく向上した。近年では、天然ものよりも養殖ものの浜値が高くつく逆転現象が見られるほどである。

身がふっくらして、腹に張りのあるもの。全体に青く輝きのあるものが新鮮。体側の黄色い線が鮮やかなもの。養殖ものは生簀で育てられているので、胸びれや尾びれの先が生簀の網に当たって擦り切れている。

良質のたんぱく質、脂質に富む。脂質には血栓性疾患を防ぐEPA、脳細胞を活性化するDHAが含まれる(ブリには特にDHAが多く、ハマチにはIPAが豊富である)。ビタミンB1、ビタミンB2などのビタミンB群、ビタミンD、ビタミンEが豊富。特にビタミンEは脂質の酸化を抑える働きをするため、脂肪の持つ多価不飽和脂肪酸が酸化しにくい。血合部分には、高血圧を予防し高脂血症を押さえ疲労回復を助けるタウリンを豊富に含有する。天然ものと養殖ものでは、栄養価にはほとんど差がない。

ブランド

・ひみ寒ぶり(富山県)
富山県氷見の寒ブリは、ことに市場での評価が高く、キロあたり5000~6000円で取引される。解禁日にはキロ1万円がつくことも珍しくない。一本10kgとして10万円である。「ひみ寒ぶり」は、判定委員会が決定した期間に富山湾の定置網で漁獲され、氷見魚市場で競られたブリを指す。さらに、魚体や重さも厳格に管理され、専用の青い化粧箱に入れて出荷される。あまりの人気に偽装問題が起きたほどで、氷見漁協は「ひみ寒ぶり」を商標登録し、ブリ1本ずつの販売証明書の発行も始めるなど、ブランド管理を徹底している。

氷見ぶり

・天上ぶり(北海道)
北海道余市で漁獲される最高級の天然ブリ。9月中旬から10月下旬にかけての定置網で獲れ、寒ブリの先駆けとなる。天上ブリが市場に出るようになったのはこの10年ほどのことだが、寒ブリほど強い脂がなく口の中で上品な脂の甘さが溶ける味わいは、旬の初物としてファンが多い。はしりの頃は魚体が小さいが脂の乗りは良く、秋口になると文字通り天上の味わいとなる。

天上鰤

・黒瀬ブリ(宮崎県)
ニッスイグループでブリ養殖事業を行う宮崎県串間市の黒瀬水産株式会社が生み出したブリ。黒瀬水産は、日本のブリ養殖の5%程度を生産する国内最大級のブリ養殖企業。2009年6月からは「夏が旬」を謳った「黒瀬の若ブリ」の出荷を開始。飼育した親魚から早期採卵した人工種苗技術の構築によって実現したブランドで、ブリの味が落ちるとされる夏場に美味しいブリを提供することで、年間を通じて安定した品質のブリの出荷を可能にした。

・かぼすブリ(大分県)
全国第3位のブリ養殖生産量を誇る大分県が、日本一の生産量を誇る「かぼす」を餌にして養殖するブリ。ヒラマサやカンパチに比べ、血合が早く変色してしまうブリに、柑橘系の抗酸化作用を持つかぼすを餌に添加することで、鮮度をより長く保ち、臭みのないブリの開発に成功。主に臼杵市や津久見市、佐伯市などで養殖されている。臼杵地区ではかぼす果汁、佐伯市米水津地区では、かぼすの果皮粉末を添加した餌を30回以上与えて出荷する。

・戸島一番ブリ(愛媛県)
「戸島」は愛媛県宇和島市から西方へ20kmの宇和海国立公園内に位置する島。潮流も早く豊富な栄養塩が海底から湧き上がってくる漁場で養殖されているブリ。絶え間なく潮の流れが変化する漁場で養殖されたブリは、運動量が豊富なため、尾のつけ根まで身が引き締まっている。ドリップが少なく、風味と旨みが長持ちするのが特長。養殖を手掛ける戸島の女性たちがブリ料理専門店「とじま亭」を出店し、ここでは炙りブリ丼、ブリカツ鍋、ブリの唐辛子味噌など独自の料理を食べることができる。

・桜ブリ(三重県・和歌山県)
東紀州沖・熊野灘のブリ漁は、産卵のために南下してくる3~4月にかけて行われる。この時期に獲れるブリを桜ブリと呼ぶ。価格は安く、キロあたり500~600円程度で取引されることが多い。またこれとは別に、鹿児島県錦江湾の桜島で養殖する桜ブリもある。

桜ブリ

市場での評価

養殖ものは年間を通じて入荷量が多く、価格も安定している。北陸、佐渡島産のブリは高級魚として取引される。房州のブリは年間を通じて漁獲される。5月を過ぎると寄生虫がつくことがあるため、天然ものは市場にほとんど出回らず、養殖ものが出る。

漁獲法

巻き網、定置網、釣り、延縄、旋網、刺し網、掛け網などで漁獲される。釣りは、関東では、初夏のワカシ釣りから、夏のイナダ釣り、秋のワラサ釣りと季節によって釣り方が変わる。ワカシならサビキ釣りでも充分で、数釣りができる。イナダ、ワラサになるとオキアミの餌釣りに変わり、道糸を素手で手繰り寄せるカッタクリで釣られる。冬になるとイカなどの生き餌を使ったブリ釣りとなる。近年はルアーフィッシングも盛んにおこなわれる。船釣りが主だが、港湾内や岸壁近くに入り込んでくることがあり、陸から釣れることもある。