ツツイカ目アカイカスルメイカ属
鯣烏賊、AJapanese common squid
生息域:日本各地
旬時期:夏~秋
調理法:刺身、煮物、干物、焼き物

スルメイカ

基本情報

古来から日本人に最も親しまれてきたイカ。今日においても最も消費量の多い魚介類のひとつで、国内で流通する以下の半分以上を占める。年間を通して味が良く、低カロリーで栄養があり、価格も安定している。煮物や焼き物、刺身や各種郷土料理に幅広く利用されているほか、塩辛などの加工品も人気。スルメは結納品としても欠かすことのできない縁起物。

名前の由来

加工品であるスルメの原材料にされるイカであることに由来する。「寿留女」「須留女」とも表記されるが、これは結納に使われる際の縁起を担いだ当て字である。初夏に関東周辺で獲れる若く小さなイカを「ムギイカ」、春から夏にかけて獲れる小ぶりのものを「バライカ」と呼ぶことがある。また最も国内消費量が多く、日本人に馴染みのあるイカであることから、各地で「真イカ」とも呼ばれる。地方名に、イキレ、オニイカ、カンセキ、サルイカ、シマメイカ、ジルマイカ、チンチロ、トンキュウ、マツイカなどがある。

特徴

胴長30cm程度。雌は大きく、雄は小さい。背側に黒い縦帯がある。ひれは菱形。ヤリイカ類と異なり、眼球が裸出する。日本周辺からオホーツク海、東シナ海にかけて分布し、水温5~27℃の海域に生息する。生まれた時期別に夏・秋・冬の3群がある。夏生まれ群は、4月から8月にかけて、日本海本州沿岸から九州沿岸まで、伊豆半島周辺海域に発生する。秋生まれ群は、9月から11月にかけて、東シナ海北部から日本海南西部までの沿海に発生し、日本海の沖合を回遊しながら成長する。日本海での漁獲量の7割を占める。冬生まれ群は、12月から3月にかけて、東シナ海から九州北部までの沿海に発生する。黒潮に乗って太平洋側を回遊しながら成長する。太平洋側で漁獲される本種の多くはこの系群である。漁期の終わり頃になると交接を行ない、雌は雄から精子の詰まったカプセルをうけとり、南下して産卵場に向かう。幼生は体長1mm程度。寿命は一年。小魚などを捕食する。

食材情報

古来から日本人に最も親しまれてきたイカ。朝廷への貢物にもスルメイカが使われてきた。今日においても最も消費量の多い魚介類のひとつで、国内水産物水揚げの5%前後を占める。国内で流通するイカの半分以上がスルメイカで、年間を通して味が良く、価格も安定している。刺身はスミイカやアオリイカに比べて味が落ちるとされるが、身を細く切って出汁醤油をかけたイカそうめんは、スルメイカならではの身の弾力を活かした料理で、函館名物として有名。醤油で甘辛く煮た煮イカや、大根やサトイモなどと煮つけた煮物、丸ごと、あるいはぶつ切りにして焼いた焼きイカ、一夜干しなど、様々な料理法が日本各地に伝えられている。ワタは濃厚な旨みを持ち、身と絡めるように炒めたり、ワタを煮汁に溶いて小鍋仕立てにしたものは、酒にも飯にもよく合う。ワタの部分だけを醤油漬けにしたり、アルミホイルに乗せて焼いても美味。身の部分とワタを合わせた塩辛は、飯の友として人気。白造り、赤造り、黒造りがある。ワタと皮付きの身を合わせた赤造りが一般的。家庭でも簡単につくれる。開いたスルメイカを干したスルメは、古くから縁起物として尊ばれ、室町時代の日明貿易やその後の南海貿易で、中国や東南アジア向けの日本の重要な輸出品目のひとつとされた。現在でも結納品のひとつとして利用されている。郷土料理としては、米を入れて炊き上げた「イカ飯」(北海道)、スルメイカを野菜などと一緒にいしる(魚醤)で煮る「貝焼き」(石川県)、スルメを戻して揚げた「スルメイカの天ぷら」(会津地方)、身と細切りにしたニンジンを漬け込んだ「イカニンジン」(同)、身を塩漬けにして干した塩イカ(青森県)、スルメを戻して麹で漬けこんだ「スルメの糀漬け」(島根県)、などがある。旬は夏から秋。生きている時は身は透き通っており、水揚げされてから時間が経つにつれて、褐色から白濁した色に変化する。なるべく身の透き通ったもの、白くないものを選ぶ。低カロリーで良質なタンパク質が多く、疲労回復やコレステロール低下に効果があるとされるタウリンを豊富に含有する。肝に派ビタミンAを多く含む。アニサキスの宿主であることから、生食には注意が必要。

市場での評価

鮮魚・冷凍共に、市場で見ない日はないほど。流通量も多く、価格は安値で安定している。釣り上げたものをすぐに〆めて、近場から水氷で直送したものは活けスルメと呼ばれ、箱詰めした下氷のものよりもやや高い。箱に並べられないほど小型のものはバライカと呼ばれ、大型のものより価格が安い。

漁獲法

夜間集魚灯を点けておびき寄せたスルメイカを、擬似餌を使って釣り上げる。定置網を使った定置網漁も行われる。主な産地は、北海道、青森県、宮城県、岩手県、石川県、長崎県。世界のスルメイカ漁獲量のトップは日本で、最大消費国であり最大輸出国である。日本におけるスルメイカは、1998年、TAC(漁獲可能量)魚種に指定され、持続可能な水産資源として管理されている。